肩関節に関連する診断名でリハビリを行う際に肩ではなくて腕の痛みを訴える患者さんいらっしゃいませんか?

待ち合いなんかで患者さんを観察していると肩を痛そうに押さえる人より上腕部を擦ったり揉んだりしている人の方が多くありませんか?

他にも…

  • 肩関節周囲炎の患者さんは大概、腕を痛がる…
  • 腱板損傷なのに腕を痛がる…
  • レントゲン上では関節の変形があるのに腕を痛がる…
  • 上腕二頭筋長頭腱の整形外科的テストは陰性なのに腕を痛がる…

  もちろん肩関節疾患の方で腕が痛くない人もたくさんいらっしゃるかと思いますが、もしかしたら私のように腕の痛みに悩む患者さんの治療に困ってはいませんか?

今回はこの“腕の痛み”について4つの要因をご紹介いたします。 こ

れらを知れば…

  • 患者さんの腕の痛みを理解することができた
  • 腕の痛みを少しでもとることができた
  • 肩の可動域も改善した

などの効果を得られる可能性が大きくなり、また患者さんの“腕の痛み”を理解する一助となり、治療の幅も広げてくれます。

患者さんの“腕の痛み”に困っている方は是非読み進めていただきたいと思います。  

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要因1 Hiltonの法則

簡単に説明すると関節を通る神経はその関節に神経の枝を分布し、支配するということ。

要するに関節枝を出しているということです。

例えば肩関節拳上や外転の主動作筋となる三角筋は腋窩神経支配ですよね。

先ほどの説明で行くと肩甲上腕関節を通る腋窩神経は肩甲上腕関節にも神経の枝を分布し、支配します。

そしてもちろん三角筋をコントロールしている腋窩神経は三角筋に筋枝と皮枝も分布するため腋窩神経で支配されている三角筋部、すなわち腕の痛みに繋がるわけです。

これをHiltonの法則といいます。    

 

要因2 収束投射説

上腕外側の皮膚領域は腋窩神経の知覚枝である上外側上腕皮神経が支配、分布しています。

通常、痛みのない方が肩の拳上を行っても痛みは感じませんが腕を動かすだけで上腕外側に分布している上外側上腕皮神経からの情報を脊髄に入力し脳に送っています。

しかし肩に炎症なり何らかの症状がある状態で肩の拳上を行うと肩関節の下方関節包に枝を出している腋窩神経が伸張され、これも脊髄を介して脳に情報を送りますが、その際、脳は過去に学習済みである上外側上腕皮神経からの情報だと誤認することがあります。

そして実体のない痛み(なんかここらへんが痛い…)が肩関節から上腕外側部に出る痛みとして感じるのです。

このメカニズムを収束投射説といいます。    

 

要因3 QLSでの絞扼

QLS1

画像引用(一部改変):Anatomography

QLSとはQuadri lateral spaceの頭文字をとってあり、肩関節後方の四角形の間隙のことを言います。

この四角形の間隙は大円筋の上縁、上腕三頭筋長頭の外側縁、小円筋、肩甲骨、上腕骨外科頚など諸説ある部位で作られます。

ここは腋窩神経と後上腕回旋動脈が通過しますがこれらが絞扼されることで末梢部位に疼痛・神経障害・感覚障害を起こします。

 

要因4 皮膚の動き

皮膚を含め、皮下の筋膜層と筋肉の動きに着目すると本来筋肉の動きに対して筋膜層は逆の動き、すなわちそこで筋膜層と筋肉との間に滑走が生じます。

しかし腕の痛みを訴える方の三角筋を触っていただければわかると思いますが、とても硬いです。

その硬いという意味は皮膚に遊びがないという意味を指しています。

要するに筋肉と皮膚を個別に動かすことができない(軽くつまんでみればわかります)。

そこでの滑走性が障害されることで腕に痛みを起こしている可能性があるのではないかと感じています。    

 

肩じゃなくて腕が痛い!? 腕に痛みを引き起こす4つの要因は以下になります。

要因1 関節をまたぐ神経が関節枝から筋枝、皮枝に影響を及ぼすHiltonの法則。
要因2 皮膚知覚枝と関節包の伸張での誤認よる関連痛である収束投射説。
要因3 QLSでの腋窩神経絞扼による腕の痛み
要因4 皮下筋膜と筋肉との滑走障害による三角筋部の痛み

 

いかがだったでしょうか。

これら4つの要因が“腕の痛み”を引き起こしている考え方の一部になるのではないかと思っています。

先入観にとらわれず、患者さんをみていただければさらに視野が広がってくるのではないかと思います。

そして今後あなたの治療にお役立ていただきたいと思います。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。