膝窩筋と言えば…

膝関節後面につく筋肉としてご存知の方も多いかと思います。

表面には大きな筋肉などに囲まれますが、ちょうど膝窩部を通る際には周りに血管や神経などが通り、とても重要な場所として知られています。

今回はその膝窩筋の基本的な解剖学に加えて、膝窩筋による痛みや可動域制限などの5つの特徴を解説していきたいと思います。

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膝窩筋の解剖

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画像引用(一部改変):Anatomography

膝窩筋(popliteus)
起始 大腿骨外側顆、外側側副靭帯、膝関節包
停止 脛骨後面でヒラメ筋線より上方
作用 膝関節屈曲・内旋
神経支配 脛骨神経(L4~S1)
トリガーポイント 脛骨への付着部付近
関連痛 膝窩部に放散

 

膝窩筋の特徴

特徴1 膝窩筋による膝関節屈曲・伸展制限

この膝窩筋による膝関節の屈曲・伸展制限に関しては以前…

【変形性膝関節症シリーズ3】膝窩筋による膝関節伸展制限

ここで詳しく解説しました。

簡単に説明すると膝窩筋は膝関節を屈曲・伸展する間で起始と停止の関係から…

屈曲・伸展ともに可動域を制限する可能性があるということです。

通常、膝関節の伸展制限なら膝関節後面屈曲制限なら膝関節前面の組織だ!

…と考えてしまいがちですが、それを覆す一つの考え方だと思います。

是非、一つ参考にしていただきたいと思います。

特徴2 膝窩部痛の原因

膝関節を屈曲して膝窩部に痛みを感じたり、つまり感を感じる方がいます。

そのような方は膝窩筋の筋スパズムが原因かもしれません。

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画像引用(一部改変):Anatomography

筋スパズムは筋肉内の圧力が高まっていることで、常に筋肉が収縮しているような状態です。

筋肉内の圧力が強いと圧迫されればもちろん痛いですし、伸ばす時には先ほどのように伸展制限にもなりえます。

高齢になれば関節の変形も伴ってくるので一概には言えませんが…

若年層では正座して痛みが再現できるかを確認することも可能です。

是非、膝窩部痛があるときには膝窩筋も疑っていただきたいと思います。

特徴3 膝関節の伸展ロックを外す機能

これはよく知られている膝窩筋の重要な機能だと思います。

しっかりと覚えておきましょう!

膝関節はスクリューホームムーブメントと言って…

膝関節屈曲 ⇒ 下腿内旋

膝関節伸展 ⇒ 下腿外旋

このような動きをします。

膝窩筋による伸展ロックを外す機能はこの膝関節伸展時に下腿が外旋位である状態を内旋方向へ誘導するという意味です。

膝関節は完全伸展位(下腿外旋)の状態クローズパックドポジション(CPP:close packed position)といい、一番安定した締まりの位置です。

この状態から膝窩筋が働き、内旋誘導することでこの膝関節伸展ロックを外し、屈曲への動きをスムーズに行わせる役割があります。

これは国家試験なんかにも出そうなので学生さんもしっかりと覚えておいた方がいいかもしれません。

特徴4 単関節筋で唯一の下腿内旋筋である

下腿を内旋させる筋は…

縫工筋・半腱様筋・半膜様筋・薄筋・膝窩筋

上記の5つが存在します。

その中でも膝窩筋は唯一の単関節筋としての下腿内旋筋として機能しています。

その意味合いは単純に股関節の影響を受けるか受けないかです。

この5つの筋肉の中には股関節の屈曲や伸展をそれぞれ役割を担う筋肉がありますよね。

ですが膝窩筋は単関節筋であるため、この股関節の影響なしに下腿の動きに影響します。

股関節の肢位を変えても下腿の動きに制限があれば膝窩筋や膝関節の組織を積極的に疑ってみるといいと思います。

特徴5 足関節背屈制限にもなりえる

一見、膝窩筋と足関節背屈制限には関係なさそうに見えますが…

足関節背屈時に腓骨が拳上します(頭側へ上がる動き)。

その際、腓骨頭直上に膝窩筋があるため、膝窩筋の柔軟性が乏しいとその腓骨の拳上が妨げられ、足関節背屈制限に繋がります。

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画像引用(一部改変):Anatomography

そのため足関節背屈制限がある場合は足関節だけにとらわれることなく、他関節の制限になりえる因子を考察することも大切です。

またこの足関節背屈時に腓骨拳上と同時に腓骨の内外旋がよく議論されていますが、諸説あるためここでは割愛します。

 

まとめ

特徴1 膝窩筋は膝関節の屈曲・伸展の制限因子になる
特徴2 膝窩筋の筋スパズムは膝窩部痛の原因になる
特徴3 膝窩筋は膝関節の伸展ロックを解除する機能あり
特徴4 他関節からの影響を受けない唯一の下腿内旋筋
特徴5 膝窩筋は腓骨拳上を制限し、足関節背屈制限にもなりえる

 

いかがだったでしょうか。

膝窩筋の解剖学の復習臨床で使える5つの特徴を理解していただけましたか。

もちろんこれが膝窩筋の全てではないかもしれませんが、出来る限り膝窩筋について解説してみました。

解剖学は全ての治療の基本になるため今後もしっかりと押さえておいてほしいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。