大内転筋と言えば…
内転筋の中で一番大きいのかな?とか
…それ以外に思い浮かびますか?
少なくとも私はこれくらいしか思い浮かびませんでした。
しかし大内転筋もまた他の筋肉と同様に調べていけば重要な筋肉の一つであることがわかってきました。
今回はそんな大内転筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ4つの特徴を解説していきたいと思います。
見出し
大内転筋の解剖
画像引用(一部改変):Anatomography
大内転筋(adductor magnus) | |
---|---|
起始 | 坐骨下枝、恥骨下枝 |
停止 | 大腿骨粗面内側唇上端、殿筋粗面付近、内転筋結節 |
作用 | 股関節内転 |
神経支配 | 閉鎖神経後枝(L3、4) |
トリガーポイント | ① 大内転筋中央から停止部付近 ② 起始部付近 |
関連痛 | ① 鼠径部から大腿内側を走り、膝関節内側まで ② 下腹部中心に生殖器付近の深部 |
関連臓器 | 膀胱、子宮、子宮付属器、前立腺 |
大内転筋のストレッチ
※後日、掲載いたします。
大内転筋の特徴
特徴1 内転筋腱裂孔の存在
画像引用(一部改変):Anatomography
大内転筋の解剖学的特徴と言えば…
内転筋腱裂孔があるということ。
内転筋腱裂孔は大内転筋腱が裂かれて出来た血管が通過する通路と言える。
ここを通過する大腿動静脈はのちに膝窩動静脈へと変わります。
膝窩動静脈と言えば…下腿以下の主な栄養血管であることが知られており、とても重要な血管の一つである。
この内転筋腱裂孔に関しては内側広筋も関与してくるため、以前も説明したが、この部位は裂孔(腱が裂けれできた通路)であるため絞扼される可能性が少ない。
しかしここを通じて大腿動静脈が通過することで膝窩動静脈へと名称が変化することはしっかりと押さえておくべき事実だと思います。
もちろん内側広筋を含む、周りの筋肉によって圧迫を受け、血流を阻害されるケースは考えられるため理解しておく必要があります。
特徴2 内転筋結節への関係
画像引用(一部改変):Anatomography
大内転筋と内転筋結節との関係、それは…
簡単に言えば停止部であるということ。
そんなことは解剖学の知識があればわかる話ですが、もちろん続きがあります。
(同じようなことを内側広筋の時にもお話ししました。)
この内転筋結節には多くの筋肉や靭帯が付着するのです。
それの筋肉・靭帯とは…
大内転筋・内側広筋・腓腹筋内側頭・内側側副靭帯・内側膝蓋支帯が代表的でこれに加え、膝関節関節包も付着します。
そのためこれらはこの内転筋結節を介して線維交流している可能性があり、互いに影響を及ぼし合っている可能性もあるんです。
だから膝関節周囲の痛み、大腿部や下腿部の痛みにも大内転筋が関与している可能性が十分に考えられるわけです。
これを知っているだけで推論を立てる時にたくさんの広がりを見せてくれると思います。
特徴3 ハンター管形成への関与
画像引用(一部改変):Anatomography
ここまで書いてきて思うのは大内転筋は非常に内側広筋との関係性が深いということ。
距離的な近さもありますが、お互いに様々な影響を及ぼし合っています。
それは今回の特徴であるハンター管形成についても言えます。
ハンター管とは…大内転筋・内側広筋・長内転筋で形成される膜性の通路のようなものでその中を伏在神経や大腿動静脈が通過していく場所を指します。
別名:内転筋管とも呼ばれています。
内側広筋を説明する際にも同様のことを書いていますが、ここで神経が絞扼されると伏在神経領域(膝関節内側~下腿内側)の痛みへと繋がります。
そのためハンター管を形成する上記の3つの筋肉の筋スパズムやハンター管自体の滑走性低下などには気を付けてほしいと思います。
(過去記事参照:伏在神経による膝内側の痛み│抑えておくべき3つのポイント)
特徴4 線維ごとの役割分担
画像引用(一部改変):Anatomography
上記の”大内転筋の解剖”では作用をわかりやすく、また理解しやすいように”股関節内転”のみ記載しました。
しかし大内転筋には3つの線維があるとされています。
恥骨 ⇒ 大腿骨粗面内側唇上端
坐骨 ⇒ 殿筋粗面付近
坐骨 ⇒ 内転筋結節
これら3つの線維が全体として働くと股関節内転の動きとして機能します。
しかし線維ごとの役割を見てみると違いが出てくるのです。
その多くは作用をみる時にこの上記の3つの線維を上部線維と下部線維に分けて示されます。(明確な境界はありません)
上部線維 ⇒ 股関節屈曲・内旋
下部線維 ⇒ 股関節伸展・外旋
おそらくこれらが単独でその作用を遂行することは少ないと思いますが、大内転筋の一つの特徴であることは言えます。
是非、参考にされてください。
まとめ
特徴1 大内転筋と言えば内転筋腱裂孔
特徴2 多くの線維が集まる内転筋結節へ停止する
特徴3 大内転筋もハンター管を形成する
特徴4 大内転筋は上・下部線維で役割が異なる
いかがだったでしょうか。
途中でも書きましたが、大内転筋は本当に内側広筋との関係が密接で深いです。
そのためとても膝周囲や大腿部の痛みに関して重要な組織であるということも言えます。
是非、これを機に内側広筋を見る際は大内転筋も意識してみていただければと思います。
今回も最後までご覧になっていただき、本当にありがとうございました。
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