前回お話ししました

膝の内側の痛みをとる!知っておくべき3つの要因

では簡単に伏在神経による膝内側の痛みを説明しましたが、 今回は…

  • 何で伏在神経による痛みが生じるのか?
  • 伏在神経による膝内側の痛みの特徴ってなんなのか?

という疑問を3つのポイントからみて説明していきたいと思います。   これらを知れば…

  • 患者さんの痛みが伏在神経によるものか理解できた
  • 膝の内側の痛みが軽減できた
  • 痛みの軽減と共に可動域まで改善できた

など多くの効果が得られる可能性が出てきます。

そうすれば治療への道筋を立てることが容易になり、治療の幅が広がることになります。

伏在神経による膝内側の痛みに関してもっと知りたい方は是非読み進めていただきたいと思います。  

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伏在神経の特徴

3つのポイントに入る前に伏在神経のことを少しお話しさせていただきます。

伏在神経は大腿神経から分岐する中で最も長い皮枝になります。

その伏在神経は大腿動・静脈と共に内転筋管(ハンター管)を通り、大腿骨内側顆の後方に達したのち大伏在静脈と共に下り、下腿・足背の内側へと至ります。

その際、膝の内側付近で膝蓋下枝内側下腿皮枝に分岐されています。  

 

ポイント1 内転筋管(ハンター管)

これは前回…

膝の内側の痛みをとる!知っておくべき3つの要因

でも紹介しましたのでここでは詳細をお伝えします。

内転筋管(ハンター管)は長内転筋内側広筋縫工筋に囲まれた筋膜性のトンネルのようなもので大腿骨内側上顆からおよそ10㎝近位に位置しています。naitennkinnkann

画像引用(一部改変):Anatomography

さらに筋膜性内転筋管の下方には大内転筋も絡んだ腱性内転筋管に続きます。

ここを先ほど説明した大腿動脈・静脈そして伏在神経が通ります。

そしてここでの絞扼が膝内側の痛みとして出現することになります。  


ここでちょっと考えたい!内転筋管の絞扼!

伏在神経が通る内転筋管(ハンター管)には長内転筋・内側広筋・縫工筋・大内転筋が絡んでくることは先ほどお伝えしましたがなぜこの場所で絞扼するのかを考えたいと思います

仮説① 内転筋管の位置

大腿部を横断面でみてみると内転筋管は上方を内側広筋外側(皮膚側)からは縫工筋、そして下方と内側(大腿骨側)からは長内転筋と大内転筋に囲まれています。

ここで筋内圧が上昇するコンパートメントを起こすと容易に絞扼されることが考えられます。

仮説② 筋肉の役割に違い

伏在神経は内転筋管を通る中でも外側(皮膚側)に位置しています。

そのため内側広筋と縫工筋に挟まれている状態にあります。

しかしそれぞれの筋肉の膝関節における作用を見ていくと…

内側広筋は膝関節伸展に働くのに対し、縫工筋は膝関節屈曲に働き、相反する動きになります。

この境には大腿内側筋間中隔がありますが、ここでの滑走性の低下が伏在神経に少なからず影響を及ぼすのではないかと考えられます。


 

ポイント2 分岐する伏在神経

伏在神経は膝関節内側付近で2つの枝に分岐します。それが…

  • 膝蓋下枝:縫工筋の腱に沿い、膝関節下内側の皮膚へ分布.
  • 内側下腿皮枝:下腿内側及び足背内側の皮膚に分布.

そのため内転筋管で絞扼された場合、膝の内側だけでなく、下腿内側から足背内側にかけても痛みや知覚障害を起こす可能性があることです。

ちなみに後述しますが伏在神経は知覚枝になるため運動麻痺や反射障害は起こらず、感覚障害だけが起こることになります。    

 

ポイント3 皮枝

伏在神経は内転筋管などでの絞扼により症状を呈することはお伝えしてきましたが、実際どのような痛みなのかを考えていきたいと思います。

推測ですが半月板損傷や内側側副靭帯損傷などではそこに痛みの原因である損傷が存在するため痛みをピンポイントでさせるはずです。

(もちろん炎症期は炎症の蔓延により腫脹や熱感が強ければ曖昧な表現になります)。

しかし伏在神経はおそらく“ぼんやり”とした痛みです。

ここ!ではなく、ここらへん?患者さんが聞きたくなるほど曖昧な表現です。

それは伏在神経が皮枝であるからではないかと思っています。

皮枝とは「皮膚に分布する神経」のことです。

だから表面的な痛み、皮膚に何かしらの異常を感じる方が多く、そして伏在神経は知覚性なので痛みなのか痺れなのかなんとも表現しづらい感覚なのではないかと感じています。  

 

まとめ

ポイント1 内転筋管(ハンター管)の解剖からみる絞扼の仮説
ポイント2 2つの分岐する伏在神経(膝蓋下枝と内側下腿皮枝)
ポイント3 皮枝による曖昧な痛みの表現

 

いかがだったでしょうか。

これらのポイントを抑えることで少しは伏在神経による膝内側の痛みが少し理解できたのではないでしょうか。

これまでの固定観念から少し視点を増やすだけで治療の可能性は広がっていくと思います。

今後のあなたの治療に生かしていただきたいと思います。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。