肩峰下滑液包への注射
肩関節周囲炎をみる機会のある理学療法士なら
一度は遭遇したことがあるでしょう。
しかし私を含め、あなたもこの
肩峰下滑液包への注射を理解していますか?
「患者さんが診察で注射を打ってくるけど、
詳細は、と言うと分からない…」
以前の私もそうでした。
実際の事を言うと、未だにその扱いに関しては
自信がありません。
しかし患者さんは次々と注射を打ってきます。
だから知らないままでは済まされません。
今回ご紹介する動画では、
”肩峰下滑液包への注射ルート”
を示しています。
これを知ることはDr.側への理解を深める事や
自分自身が治療を行う際にも役立ちます。
是非、臨床で肩関節疾患をみる機会がある方は
一度、目を通していただきたいと思います。
見出し
肩峰下滑液包への注射動画
この動画は、
”肩峰下滑液包への注射ルート”
これをとても分かりやすく解説しています。
英語表記ですが動画ですので、
英語が理解できなくても簡単に分かります。
結論から言うと…
肩峰下滑液包への注射は、
肩峰後角の2cm下から肩鎖関節(鎖骨遠位端)
に向かって実施されます。
※注意※
この動画の1:50頃、実際に注射を打つような
動画で注射針を挿入する際に、棘下筋腱を
通過して打っているようですが、実際には
貫通していません!
何故なら肩峰下滑液包は、
腱板の上に存在するからです。
この動画では角度によって少々誤解をうむような
形になっていますが、注意してください。
そもそも肩峰下滑液包とは…
まずはこの説明から入った方が
よかったかもしれませんね。
少し遅くなりましたが簡単に説明します。
肩峰下滑液包は肩峰下にある間隙を埋め、
上腕骨を肩峰下でスムーズに動かす
クッション性の役割を担っています。
もっと正確に言うと、
肩峰下、三角筋の下側で
上腕骨大結節上、棘上筋腱上に広がります。
しかし度重なる上肢の挙上動作や
オーバーヘッドスポーツによって
この肩峰下滑液包に微細な負荷が長期間、
かかり続ける事によって炎症を起こします。
また腱板損傷・断裂によっても近接しているため
同様に損傷を受けて滑液が漏れてしまう事も
あります。
そしてこれ以外にも上肢の外科手術後、
同一姿勢を続けることでクッションの役割を失い
柔軟性を失い、拘縮の原因になることもあります
またよく知られているPainful arc sign
ここでは肩峰下と上腕骨大結節が接近し、
軋轢を生みやすいため肩峰下滑液包の
存在が重要になりますが、
その分、肩峰下滑液包にも大きな負荷が
かかり、肩峰下滑液包炎へのリスクになります。
まぁ簡単に言えば、
肩関節の中で一つのクッションであり、
圧力調整器の役割を担っているという事です。
夜間痛との関係は?
肩関節疾患と言えば、
夜間痛が非常に多いです。
そこで書いているこの過去記事…
肩峰下滑液包とは直接的にな繋がりは
ありませんが、滑液包として括られる
夜間痛と関係性の深い
”肩甲下滑液包”
是非、覚えておいてください。
とても臨床に役立つと思います。
肩峰下滑液包炎の臨床的特徴
大きく挙げると2つあります。
1、様々な肢位で痛みを起こす
2、圧力をかけると疼痛が生じる
それぞれ解説していきます。
1、様々な肢位で痛みを起こす
特に癒着を起こした肩峰下滑液包炎では
この兆候が著明に現れるそうです。
この肢位だけで痛い!
というのではなく、ほぼ全方向で制限あります。
他動運動でも自動運動でも。
というのも肩峰下滑液包は
特定の筋や靭帯と違い、非常に幅広い場所を
カバーしているためです。
おまけに動画でもあるように炎症が起こると、
肩峰下滑液包は腫脹します。
そのため肩峰下滑液包炎になると、
特定の肢位に限らず、様々な肢位で痛みを
起こす可能性が非常に高いです。
2、圧力をかけると疼痛が生じる
当たり前の原理のようですが、
炎症があって滑液包が腫れると圧力をかける事で
痛みが誘発されます。
要するに圧痛があるという事。
そしてその圧痛は、肩甲上腕関節を中心に
広い範囲で確認されるのも特徴的です。
しかし痛みに関しては比較的悪くありません。
と言うのも石灰沈着性の腱板炎などと比べて
なので何とも言えませんが…
とにかく痛みに関してはそこまで強くありません
ということでここまでを全てまとめると…
・肩峰下滑液包への注射は、
肩峰後角の2cm下から肩鎖関節(鎖骨遠位端)
この方向に向かって実施される
・肩峰下滑液包は肩関節の中で
一つのクッションであり、圧力調整器として機能
・癒着性の肩峰下滑液包炎は、肩関節の全方向で
運動制限がみられる
・肩峰下滑液包炎になると肩甲上腕関節全周で
圧痛を確認することが出来る
・肩峰下滑液包炎の痛みは石灰沈着性腱板炎等と
比べると比較的痛みは軽い
肩関節疾患を臨床でみる機会がある方にとって
肩峰下滑液包の存在はとても厄介なものです。
今回も肩峰下滑液包への注射を例にここまで
話を進めてきましたが、まだまだ学ぶことは
沢山ありそうです。
これからもまた臨床に必要な情報をたくさん
発信していきたいと思いますので、今後とも
注目し続けていただけると嬉しいです。
それでは今回も最後までお付き合いいただき、
ありがとうございました。
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