肩甲上腕リズムといえば外転拳上していく際の上腕骨と肩甲骨の動きを2:1で表している場合がほとんどです。
しかし当たり前かもしれませんが肩関節屈曲や伸展、そして今回着目する内旋、外旋運動にもある一定の上腕骨と肩甲骨のリズムがあります。
これを知れば肩関節内旋・外旋の見方が変わり、新たな視点で治療を行うことができます。
是非興味のある方は読み進めていただきたいと思います。
内旋・外旋の肩甲上腕リズム
早速ですが内旋・外旋の上腕骨:肩甲骨の動きの割合を示します。
内旋時(およそ)6.6:1
外旋時(およそ)2.4:1(※両方とも1st肢位での数値)
ざっと見ていえることは内旋が外旋に比べて上腕骨の動きが大きいということ。
逆に言えば外旋時は内旋時に比べて肩甲骨の動きの割合が大きいということにもなります。
肩関節周囲炎の患者さんで考えてみると1st肢位では内旋可動域よりも外旋可動域が制限されている方が多くないですか?
外旋時の肩甲骨の動き
ここで考えたいのが外旋運動を獲得するために肩甲骨の動きをどう捉えるかです。
1st外旋時には肩甲骨は内転します。
しかし肩関節周囲炎の患者さんになると肩甲上腕関節の問題から外旋運動時に過剰な肩甲骨内転運動で代償しようとします。
要するに外旋運動時は肩甲骨の動きが大事でありながら過剰な内転運動が代償運動を助長し、結局は見た目上の外旋でしかない。
つまりは肩甲上腕関節のところでは上腕骨の動きが少ないということです。
アプローチの考え方
上記の考えからいけば外旋運動における肩甲骨の動きは重要だが肩甲骨の柔軟性ばかり出していれば代償運動を助長する恐れがあります。
そこで考えうるのがやはり他関節になります。
もちろんケミカルな問題(炎症など)があればそれが優先されますが、今回はそれ以降の話をします。
関節拘縮に関しては多くの本で紹介されているようなアプローチ方法でもいいと思います。
今回は筋肉に焦点を当ててお話しします。
腱板以外の筋肉
肩関節で一番注目されやすいのは腱板だと思います。
確かに肩関節の運動中心軸に一番近く、影響を及ぼしやすい筋肉ではあると思います。
特に炎症期は肩関節内からの影響を受けて筋スパズムを起こすようですが、炎症が沈静化し、腱板自体の筋スパズムを解消できれば肩関節の動きにも影響します。
しかし、それ以外にも考えていただきたいのが今回のポイントです。
内旋にはあり、外旋にはない筋肉とは?
先ほど話した腱板は…
内旋筋は肩甲下筋
外旋筋は棘下筋、小円筋(棘上筋に関しては諸説あるため記載を控える)
とありますが、これらは全て肩甲上腕関節で完結する筋肉です。
その秘密は胸郭上腕関節にある
今回着目するのが胸郭上腕関節になります。
簡単に説明すれば胸郭と上腕骨をつなぐ筋肉。
アウターマッスルと呼ばれる部類に入るかもしれません。
その胸郭上腕関節だけでみると…
内旋筋は大胸筋と広背筋
外旋筋は存在しません。
大胸筋や広背筋は胸郭から起始を持っているためレバーアームが長く、それだけ関節運動に拮抗する動きが大きくなります。
そのため大胸筋、広背筋での筋スパズムや短縮が外旋運動を阻害します。
いかがだったでしょうか。
1stでの外旋運動に関して新たな視野が広がりましたか?
これも一つの考え方です。
これに固執せず、皆さんも多くの可能性を考え、治療にあたっていただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
画像引用:Anatomography
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