中殿筋は大殿筋と小殿筋に挟まれており、他にもいくつかの組織とのつながりを持つ。

特に股関節を覆っているためその安定性には欠かせない筋肉として知られ、臨床上でも治療対象となる。

今回はそんな中殿筋の機能を再確認し、殿部・股関節周りの疼痛を解消、または引き起こさないようにするため解説していきたいと思います。

ぜひ興味がある方は読み進めてほしいと思います。

 

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中殿筋の解剖

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起始:腸骨翼外側で前殿筋線と後殿筋線の間、腸骨稜外唇および殿筋膜

停止:大転子尖端外側面

作用:股関節外転

神経支配:上殿神経(L4~S2)

血管支配:上殿動脈

トリガーポイント:① 仙腸関節付近の筋腹後方  ② 腸骨稜中央の直下  ③ ②よりも若干腹側付近

関連痛:①殿部全体へ広がる  ②殿筋中央外側から大腿後外側まで放散  ③仙骨を中心に腰椎、同側の腸骨稜まで

 

 

中殿筋の特徴

特徴1 外転以外の作用

中殿筋は主な作用が股関節の外転作用であるが、前部線維と後部線維で他の運動の補助を行う。

前部線維 ⇒ 股関節屈曲、内旋

後部線維 ⇒ 股関節伸展、外旋

これにより股関節における動きのほとんどを担うかもしくは補助する形で、常に活動を強いられる形となっている。

 

特徴2 大殿筋との関係

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中殿筋は線維の後方1/3~1/2程度、大殿筋に覆われているとされている。

そのため大殿筋の筋スパズムは中殿筋後部線維に影響を与える可能性もある。

 

特徴3 小殿筋との関係

tyuusyoudennkinn中殿筋は小殿筋をほぼ完全に覆っている。

しかし小殿筋は中殿筋に比べ、やや前方に位置しているため屈曲・内旋傾向が強い。

この中殿筋と小殿筋間には上殿神経と上殿動静脈も走行している。

 

特徴4 滑液包の存在

中殿筋は股関節大転子を覆い、外側面の突起部に付着するが大転子との摩擦を避けるために大転子包が存在する。

そのため過度な中殿筋の活動や筋スパズムにより大転子包との摩擦が強まれば、炎症を起こし、疼痛へと繋がる可能性も低くはない。

一度、大転子を直上から圧力をかけて確認してみるのも評価につながるかもしれない。

 

特徴5 脚長差への影響

通常脚長差を背臥位でみる時には足関節内果の高さをもとに評価することが多い。

しかし中殿筋の作用による脚長差は静止立位で腸骨稜の高さを評価する方法が適当である。

もちろん腸骨稜の高さの違いが全て中殿筋によるものではないが考察する価値はあると思います。

ここでの腸骨稜の高さの違いは相対的に股関節に与える影響を加味していただきたい。

腸骨稜が高い側

⇒ 股関内転位になり、中殿筋は伸張位

⇒ 筋の収縮効率が悪くなる上、股関節の被覆率減少

⇒ 下肢全体が外側支持へと移行し、膝・足関節ともに外側組織の損傷へと繋がる恐れあり

⇒ 下肢だけではなく、脊柱にも側屈・回旋要素が加わり、同側背筋は短縮傾向になる

これはあくまで一例ではありますが、逆の股関節では反対のことが起こる可能性があります。

脚長差も十分注意して観察することが肝要になります。

 

特徴6 座位での痛み

基本的には座位時のクッションは大殿筋であると言われていますが、大転子を覆っている以上、中殿筋も影響を受けます。

特に長時間になるとその圧力も強まり、後部線維は循環不良も起こしやすくなります。

そのため坐骨支持での長時間の座位保持にて痛みを訴える場合は殿筋群後部線維の治療も必要になるかもしれません。

 

 

いかがだったでしょうか。

今回は中殿筋に着目して6つの特徴をあげてみました。

臨床に際しても中殿筋はトリガーポイントからの関連痛も含め、疼痛の原因になりやすいとされているため今後、治療への足掛かりとなれば嬉しく思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

画像引用:Anatomography http://lifesciencedb.jp/bp3d/