上腕三頭筋と言えば…
上腕二頭筋の裏側についてる筋肉!とか
上腕二頭筋に比べたら別に重要な筋肉じゃない…とか
上腕三頭筋にはこのようなイメージをもってらっしゃる方も多いのではないかと思います。
しかし!ちょっと待ってください!
上腕三頭筋もとても重要な筋肉なんです!!
確かに上腕二頭筋に比べたら地味でマイナーなイメージの強い上腕三頭筋ですが、臨床で診ていく上ではとても重要な筋肉の一つになります。
そこで今回は上腕三頭筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴について解説していきたいと思います。
是非これを読んで上腕三頭筋への理解を深め、治療に生かしてほしいと思います。
見出し
上腕三頭筋の解剖
画像引用(一部改変):Anatomography
上腕三頭筋(triceps brachii) | |
---|---|
起始 | 長頭:肩甲骨関節下結節 内側頭:上腕骨内側後面の橈骨神経溝下内側および内側上腕筋間中隔 外側頭:上腕骨後面の橈骨神経溝上外側および外側上腕筋間中隔 |
停止 | 三頭が合同したのち尺骨肘頭へ |
作用 | 肘関節伸展 |
神経支配 | 橈骨神経(C6~8) |
トリガーポイント | ①長頭と大円筋交差部位から若干遠位 ②外側上顆の4~6㎝上方 ③上腕中央の外側縁 ④肘頭上方の内側頭 ⑤内側上顆上方の内側頭縁 |
関連痛 | ①頚部から上肢後面を手背まで ②外側上顆から前腕橈側 ③上腕背側から前腕背側と第4、5指背側 ④肘頭付近 ⑤内側上顆から前腕腹橈側、第4、5指掌側 |
上腕三頭筋のストレッチ
※後日、掲載いたします。
上腕三頭筋の特徴
特徴1 3つの間隙
画像引用(一部改変):Anatomography
これは【大円筋】のページでもご紹介しましたが、上腕三頭筋も大円筋と共に肩関節後方の3つの間隙を形成します。
まずその3つの間隙とは…
①QLS(外側腋窩隙)
②上腕三頭筋・大円筋間隙
③上腕三頭筋・大円筋・小円筋間隙(内側腋窩隙)
以上の3つになります。
それぞれについて解説していきたいと思います。
まず①QLS(外側腋窩隙)についてです。
画像引用(一部改変):Anatomography
上記の3つの間隙の中では最も有名で知っている方も多いかとは思いますが、簡単に解説していきます。
QLSとは…Quadri lateral spaceの頭文字をとった、肩関節後方に位置する四角形をした間隙の事を指します。
このQLSを構成するのが…
・上腕三頭筋長頭外側縁
・大円筋
・小円筋
・肩甲骨
・上腕骨外科頚
大体このうちの4つや5つ全てで構成されると様々な言われ方をしています。
このQLSの間隙を通過する組織は…
・腋窩神経
・後上腕回旋動脈
上記の2つの組織が通過します。
次に②上腕三頭筋・大円筋間隙についてです。
画像引用(一部改変):Anatomography
この間隙は先ほど説明したQLS直下に存在する上腕三頭筋と大円筋で構成された逆三角形の間隙になります。
よくQLSと間違えられて覚えている人も多い間隙だと思います。
この間隙はQLSとは大きく異なります。
それが間隙を通過する組織の違いです。
この上腕三頭筋・大円筋間隙を通過する組織は…
・橈骨神経
・上腕深動脈
この2つになります。
また痛みを及ぼす場所にも明確な違いがあります。
・QLS ⇒ 上腕部(三角筋)辺りの痛み
・上腕三頭筋・大円筋間隙 ⇒ 肘関節周囲の痛み
全く場所がことなりますから注意していただきたいと思います。
最後に③上腕三頭筋・大円筋・小円筋間隙(内側腋窩隙)についてです。
画像引用(一部改変):Anatomography
ここはその名の通り…
・上腕三頭筋
・大円筋
・小円筋
これら3つの筋肉で構成される筋肉です。
この中を通過する組織は…
・肩甲回旋動脈
この組織が挙げられます。
肩甲回旋動脈とは…棘下筋へと枝を伸ばす動脈として知られています。
上記3つの筋肉での絞扼により棘下筋への影響(筋スパズムや筋萎縮にまで)が及ぶ可能性があるため覚えておいてください。
上腕三頭筋が関与する3つの間隙
・QLS(外側腋窩隙)
・上腕三頭筋・大円筋間隙
・上腕三頭筋・大円筋・小円筋間隙(内側腋窩隙)
この3つは是非覚えておいてほしいと思います。
特徴2 橈骨神経との関係
画像引用(一部改変):Anatomography
上腕三頭筋と言えば、その名の通り3つの頭(起始)を持つ筋肉です。
その上腕三頭筋を支配する神経と言えば…橈骨神経です。
この橈骨神経は上腕三頭筋を支配するだけでなく、通過する際にも重要なポイントがあります。
そもそも橈骨神経は腕神経叢の後神経束から起こっています。
その後、下向して上腕骨後面にある橈骨神経溝を通り、外側上顆の前に出てきながら前腕へと続いていきます。
その際重要なのが、橈骨神経の走るルートです。
橈骨神経は上腕骨後面の橈骨神経溝を通りながら…
上腕三頭筋内側頭と外側頭の間を通過していきます。
そのため、橈骨神経へとアプローチする際にはこの上腕三頭筋内側頭と外側頭の位置をしっかりと把握し、治療へあたることが重要です。
内・外側頭間のリリースや筋スパズムの改善などで橈骨神経由来の疼痛に効果を発揮するのではないかと思います。
そのためにもまずはしっかりと解剖学を押さえておきましょう!
特徴3 肩伸展筋か?肘伸展筋か?
画像引用(一部改変):Anatomography
上腕三頭筋と言えば、肩関節伸展か?それとも肘関節伸展か?
もちろんどちらも間違ってはいません。
しかし上記の【上腕三頭筋の解剖】にあるように上腕三頭筋の主な機能としては…
”肘関節伸展”ではないかと思っています。
その理由は、肩関節をまたぐ筋肉が三頭のうち一頭(長頭)のみであるということ。
そして肘関節をまたぐ筋肉は三頭が合同したのちに肘関節を通過し、肘頭へと付着すること。
そうすると必然的に肩関節伸展筋力より肘関節伸展筋力の方が強いことが分かります。
もちろん肘関節伸展がメインですが肩関節伸展には関係ないわけではありません。
上腕三頭筋長頭は肩甲骨関節下結節に付着するため、関節唇との関係も十分にあります。
上腕二頭筋のように関節唇損傷を起こす可能性は十分にあり得るということです。
また肩関節伸筋であれば、肩関節屈曲を制限する一因であるということも言えます。
上腕三頭筋の主な作用は”肘関節伸展”でいいとは思いますが、肩関節伸展にも関与する2関節筋(長頭)が存在することも覚えておいてほしいと思います。
まとめ
特徴1 小円筋・大円筋と共に3つの間隙形成に関与
特徴2 内側頭と外側頭間を橈骨神経が通過する
特徴3 上腕三頭筋は肘関節伸展に主に作用する
いかがだったでしょうか。
上腕二頭筋に比べたら地味でマイナーなイメージの上腕三頭筋もとても重要な筋肉の一つであるということがご理解いただけましたでしょうか。
なかなか治療対象にはなりにくい筋肉かもしれませんが、今回のこの知識を臨床で生かしてほしいと思います。
それでは今回も最後までご覧いただきまして本当にありがとうございました。
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