大円筋と言えば…

腱板の中には入らないけど似たような筋肉でしょ?とか

大→小と小結節につく筋肉じゃなかったかな?とか

大円筋にはこのようなイメージを持ってらっしゃる方が多いのではないでしょうか。

腱板じゃないし、あんまり重要な筋肉じゃなさそう

こんなイメージさえもたれる大円筋。

今回の内容をみたら、そのイメージは一変するかもしれません。

大円筋はそんなに大事じゃないでしょ…と思っているあなたに読んでほしいと思います。

まずは大円筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴を解説していきたいと思います。

SPONSORD LINK

大円筋の解剖

page848548

画像引用(一部改変):Anatomography

大円筋(teres major)
起始 肩甲骨下角後面
停止 上腕骨小結節稜
作用 肩関節伸展、内転、内旋
神経支配 肩甲下神経(C5、6)
トリガーポイント 肩甲骨下角の起始部付近、筋腹外側
関連痛 三角筋部後側方から上肢後面
関連臓器 心臓

 

大円筋のストレッチ

※後日、掲載いたします。

 

大円筋の特徴

特徴1 QLSとの関係

ダウンロード (35)

画像引用(一部改変):Anatomography

前回の【小円筋】のページでもお話ししましたが、大円筋もQLSとの関係が深いです。

ちなみにQLSをよくご存じない方のためにももう一度簡単に説明させていただきます。

QLSとはQuadri lateral spaceの頭文字をとったもので、肩関節後方にある四角形の間隙の事を指します。

このQLSの間隙を構成するのが…

・大円筋

・小円筋

・上腕三頭筋長頭外側縁

・肩甲骨

・上腕骨外科頚

多くてもこの5つで構成されると言われています。

(場合によっては上記のうちの4つだったり、色々です。)

そしてこのQLSを通過する内容物、組織は…

・腋窩神経

・後上腕回旋動脈

この2つがQLSを通過すると言われています。

QLSと大円筋の関係性は…

QLSという間隙を構成する中で大円筋は下側から支えるように存在しています。

そのため大円筋が筋スパズム線維化してしまうことで小円筋同様、QLSを狭くする方へと収縮・短縮してしまうことで腋窩神経や後上腕回旋動脈を圧迫してしまうことで、そこから先の部分・末梢部位に疼痛感覚障害などを引き起こす可能性が出てくるわけです。

特に肩ではなく、上腕部の痛み(腋窩神経領域)の痛みにはこのQLSでの絞扼が考えられるため念頭に置いていてほしいと思います。

ここまでは大体、小円筋と似た内容でしたが、次の特徴2では大円筋特有の間隙に関する内容をお伝えします。

特徴2 間隙との関係

ダウンロード (35) - コピー

画像引用(一部改変):Anatomography

肩関節には上記のQLS以外にもいくつかの間隙が存在すると言われています。

代表的なのが先ほどのQLSですが、他にも大円筋が関わる間隙が2つほどあります。

①大円筋・上腕三頭筋間隙

②大円筋・小円筋・上腕三頭筋長頭間隙(別名:内側腋窩隙)

(ちなみに両方とも正式名称ではありません)

両方とも大事な間隙なので順番に説明していきます。

まず①大円筋・上腕三頭筋間隙からです。

ここはQLSの下側に存在する大円筋と上腕三頭筋で構成される逆三角形の間隙になります。

よくQLSと間違えられることがあるので注意してください。

この両者の違いは通過する内容物・組織の違いです。

・QLS          ⇒ 腋窩神経・後上腕回旋動脈

・大円筋・上腕三頭筋間隙 ⇒ 橈骨神経・上腕深動脈

はっきり言って全く違う内容物・組織が通過します。

簡単に説明すると…

・QLS          ⇒ 上腕部(三角筋付近)の痛み

・大円筋・上腕三頭筋間隙 ⇒ 肘関節周囲の痛み

よく腕が痛いからイコール、QLSだ!となりがちですがそうではありません。

もしかしたら肘関節側に近い痛みであれば、大円筋・上腕三頭筋間隙での橈骨神経・上腕深動脈の絞扼が考えられると知っておいてほしいと思います。

 

次に②大円筋・小円筋・上腕三頭筋長頭間隙(別名:内側腋窩隙)に関して説明します。

ここは上記の通り、大円筋・小円筋・上腕三頭筋長頭で構成された間隙になり、QLSが外側腋窩隙と呼ばれるのに対して、それより内側に存在するため内側腋窩隙と呼ばれています。

この内側腋窩隙には肩甲回旋動脈が通過します。

肩甲回旋動脈は、肩甲下動脈からの分枝であるが、内側腋窩隙を通過する前に肩甲上動脈と吻合し、内側腋窩隙を通過後、棘下筋へと枝を伸ばすとされている。

そのため内側腋窩隙での絞扼が全く関係のない棘下筋への血流を妨げることによって筋スパズムなどを起こす可能性があると言える。

是非、この2つの間隙はQLSと共に覚えておいてほしいと思います。

特徴3 広背筋との関係

起始は違えど、大円筋は広背筋と似たような走行をしており、よく広背筋の肩甲頭としても呼ばれているようです。

それくらい停止部である付着部に関しては区別をつけるのが難しいくらい吻合し合いながら停止していると言われています。

作用も肩関節伸展・内転・内旋肩関節の機能としては全く同じです。

違いと言えば、体幹・骨盤帯の動きを伴うか伴わないかです。

大円筋 ⇒ 肩甲-上腕筋

広背筋 ⇒ 体幹-上腕筋

この違いは誰でもわかると思います。

互いに同じような作用を持つため大円筋をみる時は広背筋も広背筋をみる時は大円筋もチェックしておくといいかもしれませんね。

 

まとめ

特徴1 大円筋もQLSを構成する一部
特徴2 QLS以外の間隙も構成している 
特徴3 大円筋と広背筋はほぼ似たような筋肉

 

いかがだったでしょうか。

肩甲骨-上腕骨を結ぶ筋肉の中では腱板の中に含まれない大円筋。

そのためあまり重要視されていないようですが、この内容を見れば様々な痛みを引き起こす可能性があり、逆に腱板より重要!?と思わせるほどです。

是非、今回の内容があなたの臨床に役立てていただければ嬉しく思います。

今回も最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。