肩甲下筋と言えば…
腱板を構成する一つの筋肉でしょ!?とか
肩関節内旋筋かな!?とか
肩甲下筋のイメージは?と聞かれるとこのような回答が多いと思います。
もちろん間違ってはいませんし、正しい知識です。
しかしこれだけでは肩甲下筋をより深く理解しているとは言い難いです。
そこで今回は肩甲下筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴について解説していきたいと思います。
見出し
肩甲下筋の解剖
画像引用(一部改変):Anatomography
肩甲下筋(subscapularis) | |
---|---|
起始 | 肩甲骨肩甲下窩 |
停止 | 上腕骨小結節 |
作用 | 肩関節伸展、内転、内旋 |
神経支配 | 肩甲下神経(C5,6) |
トリガーポイント | 肩甲骨窩内に点在 |
関連痛 | 肩関節後部、肩甲骨全体、上腕後面、手関節全体 |
肩甲下筋のストレッチ
※後日、掲載いたします。
肩甲下筋の特徴
特徴1 腱板としての役割
画像引用(一部改変):Anatomography
今までも【棘上筋】・【棘下筋】・【小円筋】を通して腱板についてお伝えしてきました。
そこで今回も腱板について簡単に説明してから腱板内での肩甲下筋の役割について解説していきたいと思います。
腱板とは…上腕骨と肩甲骨を結ぶ棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋で構成される腱の総称。
その役割は…上腕骨頭を肩甲骨の関節窩に引き付け、求心位を保つことである。
腱板がしっかりと機能し、上腕骨頭が関節窩に対して求心位を保てている状態では関節が安定し、動作時に逸脱した動きをすることなく、非常に広い範囲を自由に動かすことができます。
しかし腱板損傷や腱板断裂などで腱板内での張力が保てなくなると上腕骨頭を関節窩に求心位に保つことができず、通常の動きから逸脱してしまい、代償運動へと繋がることがあります。
以上が簡単ですが、腱板についての解説になります。
ここからは腱板と肩甲下筋との関係について解説していきます。
みなさんご存知かと思いますが、肩甲下筋は腱板内で唯一の内旋筋になります。
他の3筋(棘上筋・棘下筋・小円筋)は外旋筋にあたるため、その作用に拮抗する働きが求められています。
(【棘上筋】のページでも簡単に解説しましたが、棘上筋の前部線維が内旋に作用するとの報告もあるようです)
つまりは3つの外旋筋に対して1つの内旋筋が拮抗しているため、肩甲下筋は必然的に筋ボリュームも大きくなり、肩甲下窩全体に存在しています。
そのため関節可動域の制限に関しても拳上や外転に関してはより下部線維が制限になりやすいことは想像がつきやすいと思います。
また小結節へと付着する大円筋・広背筋とは筋線維自体の交流はあるか不透明ですが、神経線維は共有しているため繋がりがあるとされています。
特徴2 滑液包との関係
画像引用(一部改変):Anatomography
肩甲下筋と言えば、滑液包との関係は外せません。
よく聞く滑液包と言えば、肩峰下滑液包(第2肩関節にありインピンジメントをさけるための滑液包)が挙げられますが、それ以外にも重要な滑液胞として肩甲下滑液包が存在します。
この肩甲下滑液包は肩甲下筋の前に肋骨との摩擦を避けるため存在する肩関節周囲の滑液包としては大きい部類に入る滑液包となります。
あまりフォーカスされることはありませんが、とても重要な滑液包の一つです。
肩甲下滑液包は肩関節関節包との繋がりがあります。
なぜか?
それは肩関節の関節包の圧力が強まった時、その圧を逃がすための措置として肩甲下滑液包と連結しているとされています。
例えば…
右肩を下にして寝ている場合、右肩関節には圧縮力と肩関節内転の力が加わり続けます。
この状態になると肩関節関節包内は緊張し、圧力が高まります。
そのためその関節包内の圧力を逃がすために滑液を肩甲下滑液包へと送り、関節内の圧力を保っているとされています。
だから逆に言えば、肩関節関節包と肩甲下滑液包の交通が妨げられてしまえば、肩関節内の圧力が高まり、痛みが生じる可能性が増え、これが夜間痛の原因にもあり得るとも言えます。
またこの肩関節関節包と肩甲下滑液包を結ぶ通路の一部をWeitbrecht孔と言い、この部分が閉塞してしまうと両者が交通できなくなると言われています。
このWeitbrecht孔は肩関節の上関節上腕靭帯と中関節上腕靭帯の間にあると言われているため、この靭帯に炎症からの線維化が起こることでWeitbrecht孔が閉塞してしまう可能性があると言われているため、肩関節の炎症には早急に対処した方が良いと思います。
特徴3 靭帯やその他の組織との関係
画像引用(一部改変):Anatomography
肩甲下筋は肩関節関節包内靭帯と呼ばれる、上・中・下関節上腕靭帯全てと線維同士の繋がりがあるとされています。
また上腕二頭筋長頭が通過する結節間溝の上を長頭腱を押さえつけるように存在する上腕横靭帯にも影響を与えるとされています。
そのため靭帯とは…
・上関節上腕靭帯
・中関節上腕靭帯
・下関節上腕靭帯
・上腕横靭帯
これらとの関係があるとされています。
そのほかにも小胸筋・前鋸筋・肩甲下筋で三方向から包み込む腕神経叢とも関係があるとされているため理解しておく必要があると思います。
まとめ
特徴1 肩甲下筋も腱板内で重要な筋の一つ
特徴2 肩甲下筋は滑液包との繋がりも重要
特徴3 関節上腕靭帯や腕神経叢とも繋がりあり
いかがだったでしょうか。
今まで腱板の中の一つの筋肉であまり注目してこなかったであろう肩甲下筋も少し重要な筋肉であることが伝わってきましたでしょうか。
なかなか治療するにも下部線維以外は触りにくいため治療対象になりにくい一面もありますが、是非今後の治療の参考にしていただければと思います。
今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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