肩甲挙筋と言えば…

肩凝りが発生しやすい場所!?とか

割と小さい筋肉であんまり重要じゃないんじゃない?とか

肩甲挙筋のイメージと言えばこのような言葉がよく聞かれるのではないかと思います。

確かに他の背部筋と比べてみれば小さいですし、あまり重要度が高くないように思えます。

しかし上述したように肩凝りや他にも肩関節などに及ぼす影響はとても大きと私は考えます。

そこで今回は肩甲挙筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴について解説していきたいと思います。

是非これを読んで肩甲挙筋の治療に生かしてほしいと思います。

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肩甲挙筋の解剖

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画像引用(一部改変):Anatomography

肩甲挙筋(levator scapulae)
起始 C1~C4、5横突起後結節
停止 肩甲骨上角、内側縁上部1/3
作用 肩甲骨拳上、内転、(下方回旋)
頚椎伸展(両側収縮)・同側側屈(片側収縮)
神経支配 肩甲背神経(C4~C6)
トリガーポイント 肩甲骨上角付近と肩から項部への移行部分
関連痛 肩から項部への移行部を中心に
肩甲骨内側から肩甲骨背側に存在
関連臓器 肝臓、胆嚢、胃、心臓

 

肩甲挙筋のストレッチ

※後日、掲載いたします。

 

肩甲挙筋の特徴

特徴1 僧帽筋との関係

ダウンロード (55)

画像引用(一部改変):Anatomography

肩甲挙筋と言えば、その周りを僧帽筋や胸鎖乳突筋に囲まれています

その中でも僧帽筋との関係は非常に興味深いものがあります。

それは以前、【前鋸筋】【小・大菱形筋】のページでもお話ししましたが、拮抗筋と共同筋の両方を兼ね備えているという特徴です。

もちろん肩甲挙筋と僧帽筋もこのような関係性にあります。

それではそれぞれの作用を簡単に見ていきましょう。

・肩甲挙筋 ⇒ 肩甲骨拳上、内転、(下方回旋)

・僧帽筋  ⇒ 上部:肩甲骨挙上、上方回旋、(内転)

        中部:肩甲骨内転、(上方回旋)

        下部:肩甲骨下制、下方回旋、(内転)

このようになっています。

そのため…

・肩甲骨内転に関しては共同筋であり

・肩甲骨拳上と下制、上方回旋と下方回旋に関しては拮抗筋

となります。また拮抗筋に関して詳しくみていけば…

・拳上・下制   ⇒ 肩甲挙筋と下部線維

・上方・下方回旋 ⇒ 肩甲挙筋と上部線維

との拮抗作用になるため肩甲挙筋は僧帽筋全体と共同筋でありながら拮抗筋であることが分かります。

そのため静的な状態で肩甲骨がどのような位置にあるのか、どの筋肉が収縮または弛緩してそうなっているのか。

もし…

・肩甲骨拳上   ⇒ 肩甲挙筋・僧帽筋上部の収縮僧帽筋下部の弛緩

・肩甲骨下制   ⇒ 肩甲挙筋・僧帽筋上部の弛緩僧帽筋下部の収縮

・肩甲骨上方回旋 ⇒ 肩甲挙筋・僧帽筋下部の弛緩僧帽筋上部の収縮

・肩甲骨下方回旋 ⇒ 肩甲挙筋・僧帽筋下部の収縮僧帽筋上部の弛緩

あくまでも肩甲挙筋と僧帽筋だけに着目したらこのようになると思います。

しかし他の肩甲骨に付く筋肉も含めて考慮してくださいね。

特徴2 頚椎・肩甲骨との位置関係

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画像引用(一部改変):Anatomography

上記の【肩甲挙筋の解剖】でも記載していますが、肩甲挙筋は頚椎を起始として肩甲骨上角に停止します。

そのため当然のように頸椎の動きにも関与してきます。

それが頚椎伸展と同側側屈になります。

しかし人間は基本的に頭部を正中位に保った状態で行動・生活しています。

そのため肩甲挙筋が収縮、もしくは短縮方向へ働けば、頚椎ではなく肩甲骨が動くことになります。

そうなると…

・肩甲挙筋の収縮・短縮 ⇒ 肩甲骨拳上・下方回旋

を呈するはずです。しかしここで注目してほしいのは、肩甲骨の動き方です!

もし、肩甲挙筋のみの収縮・短縮であるなら…肩甲骨の上角部分のみが拳上するはずです。

しかし姿勢を観察する時に肩甲骨全体が拳上しているように見受けられればこれは肩甲挙筋のみの働きではないと言えます。

他にも肩甲骨を拳上させる僧帽筋上部線維などを疑う必要が出てきます。

ただ単に肩甲骨が挙がっている、下がっている!だけではなく、回旋や内外転、肩甲骨内側縁が浮いていないかなど様々なチェックをされることで色々な可能性を見出してほしいと思います。

特徴3 関連臓器との関係

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画像引用(一部改変):Anatomography

肩甲挙筋は肝臓・胆嚢という臓器と密接な関係がある

これは理学療法士である我々にはあまり馴染みのない内容ですが、東洋医学や統合医学を学んでいる方にとってはごく当たり前の知識だと言われています。

肝臓を例に簡単に説明すれば、肝臓を包んでいる膜を支配している横隔神経が原因で肩甲挙筋に筋緊張が発生するということ。

すると肩甲挙筋部に痛みを感じたり、肩甲骨の動きに派生して肩関節障害へと発展する可能性もあります。

特に肝臓は起床後の痛みが特徴的である。

起床後は循環がうまくいかないため肝臓が腫れていたりして痛みを引き起こす。

しかし数10分経てば血流が改善され、痛みが引いてくるようです。

理学療法士である私たちは筋骨格系のメカニカルな部分を主に見ていますが、内臓が与える影響についても軽く知っておくことで問診を発展させられます。

是非、参考にしていただきたいと思います。

 

まとめ

特徴1 肩甲挙筋は僧帽筋と拮抗筋であり共同筋である
特徴2 頚椎や肩甲骨の動きから筋肉の影響を予測する
特徴3 肩甲挙筋は肝臓、胆嚢と関係が深い

 

いかがだったでしょうか。

頚椎と肩甲骨を繋ぐ小さな筋肉である肩甲挙筋

なかなか治療対象としてみることは今まで少なかったかもしれませんが、この内容をみて少しは肩甲挙筋の重要性を理解していただけましたでしょうか。

是非、臨床の場でもこの内容を活用していただきたいと思います。

今回も最後まで読んでいただきまして本当にありがとうございました。