よくある『力抜いてください』具体例1

PT 「〇〇さん、足の力抜いてみて下さ~い

pt 「えっ!?力入ってます!?!?

PT 「はい。ゆっくり足を下してみてください」

pt 「力抜くのって難しいですね~」

 

よくある『力抜いてください』具体例2

PT 「〇〇さん、足の力抜いてみて下さ~い

pt 「また力入ってました!?いつも言われるんですよ~

PT 「無意識に入ってしまうんでしょうね~」

pt 「すいませ~ん」

(※pt=patient 患者さんという意味の略語です。説明しなくてもいいかもしれませんが念のために…)

 

一日にこの言葉を何度言うでしょうか。

 

「力抜いてください」

 

患者さんも無意識なんでしょうけど、こちらからしても無意識に言っているときがあります。

要するに反射的に口癖のようになっている状態です。

患者さんによっては一人に対して4,5回言う時もありません?

実際に力が抜けてくれないとこちらが誘導したい運動を行えなかったりと不便なことが多々あります。

たまには話をしていてヒートアップしたのか体をガチガチに固めたり、ついには身振り手振りをいれるもんだから肩関節を動かす際にとても苦労することが私はよくあります。

そんな相手をなだめながら治療をしていますが、この【力が入っている状態】今回はこの状態を少し考察していきながら、あるある話を進めていきたいと思います。

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なぜ力が入ってしまうのか…

まず考えるべきは、そもそも何で体に力が入ってしまうのか?ということです。

先ほども言いましたが、本人はほとんど自覚がありません。

これがまた厄介だし、患者さんも何度も「力抜いてくださ~い」と言われるとあまり気分的には良くないはずです。

何しろ無意識ですからね…

意識的にやっているならまだしも無意識でされていることを注意され続けるとさすがに本人もイラついたり滅入ってきたりするもので、言い過ぎも考えものです。

さてさて少し原因と考えられるものを挙げてみましょうか。

【力が抜けない!】原因1 想像できないため

初めての治療や初めて入るセラピストの時は特に力が抜けにくいものです。

それは今から何をするかわからないからです。

多くの患者さんは患部に痛みや痺れを抱えています。

薬を飲んでも良くならない、湿布をしても良くならない…

そして次の手段である可能性が高いリハビリ治療

しかし初めて治療される方は、どんな治療をするのか想像がつかないんです。

 

痛いことするんだろうか…』

思いっきり押されるんだろうか…』

 

無意識にこんなことを想像すれば、自ずと体は防衛反応を起こし、緊張します。

この無意識の勝手な想像が体の力が抜けない状態を引き起こしている可能性があるんです。

【力が抜けない】原因2 恐怖感

治療を複数回行っている患者さんでも何度も何度も力が抜けない方はいらっしゃいます。

そんな方によくあるのが恐怖をもとに力が入っているケースです。

 

『あ~今日もあの痛い治療を受けないといけないのか…』

『この先生の押し方、痛いんだよな…』

 

このように無意識の恐怖感があると本人も知らないうちに力が入ってしまうケースもあります。

これはセラピスト側に問題がありますよね。

【力が抜けない】原因3 ポジショニング

右肩が痛い人を右側臥位にしたり、腰椎伸展時に痛みがある人をパピーポジションとらせたり…

こんなことしてたら痛みを堪えて緊張してしまうのは目に見えています。

特に側臥位なんかベッドとの接触面積が背臥位とかよりも極端に少ないですから股関節・膝関節を曲げて支持基底面を広げること前後へ不安定性を解消することができます。

いくら担当の理学療法士を信用していても治療するときのポジショニングが安定しなければ、体を緊張させて姿勢を保とうとするはずです。

だからこれはポジショニングを適切にするだけで緊張は落ちるはずです。

 

どうしたら力が抜けるのか?

ここまで大まかに3つの原因を挙げてきましたが、これらに対しての対処法をご紹介していきたいと思います。

【力が抜けない】対処法1 事前の説明

【力が抜けない】原因1ではこれから行う治療が想像できないために無意識に力を入れてしまう可能性があることについてお伝えしました。

これに対する対処法としてできることはただ一つ、治療を行う前に事前の説明を行うことが重要です。

体を触って治療することも重要ですが、この事前の説明にも”患者さんの不安を取り除く”というメリットがあります。

 

「今から立った状態・座った状態・寝た状態で、治療前の評価を行います。この評価は…」

「では続いて治療していきますが、今回は〇〇に〇〇の治療をしていきます。しかし痛みは伴いませんのでご安心ください」

「それではベッドへ仰向けに寝てみましょう」

 

さっさとベッドへ寝かせて治療をするよりこの方が安心しますよね。

自分が患者さんの立場なら理由も説明されず、治療されるというのは不信感を抱きかねないと思います。

評価・治療前の事前説明。これだけでも全然違うと思います。

【力が抜けない】対処法2 恐怖感を与えない

これはとても難しい問題です。

治療にも様々な考え方がありますし、患者さんも痛いこと・押し方が強いことなどに関してはあまり口にしない人が多いからです。

しかし放置しておくと不信感が強まり、治療が進まないこともあります。

一言に恐怖感を与えないといっても、先ほどの事前説明なんかはここでも役立ちます。

 

『この痛い治療は適切なんだ…』

『あえて強く押しているってことなんだ』

 

こういう理解が得られれば、緊張度合いも変わります。

何の説明もなしにただただ痛いのに耐える治療は苦痛以外の何物でもありません

これは絶対に避けましょう

【力が抜けない】対処法3 深呼吸

まぁよくありがちな対処法の一つですね。

一言で言えば、呼吸を使って副交感神経優位にして力を抜かせる方法になります。

深呼吸するとき、息を吐くと胸郭全体が下がり、力が抜けていくのがわかると思います。

座位でやればさらにわかりやすいですよね。

 

吸気 ⇒ 胸郭全体が上がり、骨盤前景・体幹伸展方向でより多くの酸素を体内に入れる

呼気 ⇒ 胸郭全体が下がり、骨盤後傾・体幹屈曲(猫背様)で二酸化炭素を排出する

 

「力を抜いてください!」じゃなくて「一回深呼吸してみましょうか」

是非、試してみてください。

【力が抜けない】対処法4 力を入れさせる

『ん?何言ってんの?』って思いました?

間違ってはいませんよ。力を入れさせるんです。

例えば左側臥位になって右肩甲骨を動かそうとしたときに肩甲帯を挙上させてガチガチに固めているときは…

 

「〇〇さ~ん、一回肩に力入れて肩をすくめてみましょうか~

は~い。いいですよ~

 

これで結構、力が抜けます。

疑いの目をもっているなら是非試しにやってみてください。

患者さんも何度も何度も「力抜いてください」と言われて、少しナイーブになっています。

そこで逆の運動をさせて「は~い。いいですよ~」ということで、暗に『力抜いていいですよ~』と言っていることと同じ意味になるんです。

患者さんの心理面にも配慮するとこんな方法もありです。

これも是非、使ってみてください。

 

今回は患者さんによくする声掛けとして「力抜いてくださ~い」という言葉について考えてみました。

最後にこれだけは伝えておかないといけません。

【お互いに悪意はない!】

ということ。治療者側も患者さん側もわざとしているということはほとんどありません。

是非この患者さんが力が抜けていない現状を言葉一つで片付けるのはなく、その背景まで追求して治療に当たってもらえるきっかけになってくれればと思います。

それでは今回も最後までご覧いただきまして本当にありがとうございました。