多くのセラピストは脊柱のことに関してはよく勉強されていますが、
肋骨の詳細な動きまでは知らない方は結構多いです。
そのため今回は肋骨について解説していきたいと思います。
あまり細かい動きの話ではなく、肩や腰などに及ぼす影響などを考えながら
進めていきたいと思っていますでの気軽に読んでいただきたいと思います。
見出し
肋骨の復習
肋骨は前方では胸骨、後方では胸椎と連結して胸郭をなしている。
第1~7肋骨 ⇒ 真肋(肋軟骨が胸骨と直接連結している)
第8~12肋骨 ⇒ 仮肋(直接胸骨へは連結しない。)
(第8~10肋骨は肋軟骨を介して胸骨へ達するが、第11、12肋骨は胸骨に達しないため浮遊肋とも呼ばれる。)
胸肋関節
胸肋関節は肋椎関節と肋横突関節の二つからなっています。
肋椎関節 ⇒ 基本的に上下の椎体をまたぐようにして形成されており、一つの椎体に2つの肋椎関節を持っているが、第1肋骨のみ第1胸椎のみとなっている。
肋横突関節 ⇒ 第1~10肋骨は形成されるが、第11、12肋骨にはありません。
Chest grippingってなに?
これが今回の最大のポイントです。
Chest grippingとは下位胸郭横径拡張不全と言います。
横隔膜の解剖を解説しました。
その中の肋骨部の起始(第7~12肋軟骨の肋骨弓)に
横隔膜は付着しています。
もうお気づきの方はいらっしゃると思いますが…
この横隔膜の肋骨部の起始が下位胸郭に当たり、
この部分の拡張不全が問題になっています。
キャリパーアクションとは
キャリパーアクションという言葉はご存知でしょうか?
簡単に説明する肋骨の特定の動きです。
肋骨の関節面と傾きにより上位肋骨と下位肋骨で動きが違います。
上位肋骨 ⇒ ポンプハンドル運動(矢状面での縦の動き)
下位肋骨 ⇒ バケツハンドル運動(前額面での横の動き)
と呼ばれています。
少しわかりやすく説明すると…
上位肋骨のポンプハンドル運動は矢状面、体を横から見たときに上下運動します。
吸気には上にあがり、呼気には下へ戻ってきます。
下位肋骨のバケツハンドル運動は前額面、体を正面から見たときに横方向へ動きます。
吸気には横に広がり、呼気には元の位置に戻ってきます。
なぜ下位肋骨に着目するのか?
上位肋骨と下位肋骨では先ほどの真肋と仮肋の違いに似ています。
それぞれ文献により定義が若干違いますが説明します。
上位肋骨 ⇒ 胸骨と関節を形成している
肋横突関節の適合性が高い(横突起が凹、肋骨頭が凸)
下位肋骨 ⇒ 肋軟骨への付着のみ
肋横突関節の適合性が低い(横突起が平面、肋骨頭が凸)
これをみると上位肋骨が安定しており、可動性が低く、
それに対して下位肋骨は不安定で可動性は十分にありそうに感じます。
なぜ下位肋骨に機能不全が起こるのか?
今の説明をみるとChest gripping(下位胸郭横径拡張不全)が
起こる可能性は低いように感じます。
しかしなぜ起きてしまうのか。
私は下後鋸筋などの下位肋骨に付着する筋肉による影響だと考えています。
先ほどの説明だと不安定で可動性は十分であるなら関節部分での制限はあまり大きくならないと考えられます。
そのためそれ以外で肋骨の動きを能動的に止めてしまうのが筋肉しかないからです。
肋骨に付着する筋肉
広背筋、上後鋸筋、下後鋸筋、脊柱起立筋(腸肋筋)、小胸筋、鎖骨下筋、前鋸筋、内肋間筋、外肋間筋、長肋骨挙筋、短肋骨挙筋、肋下筋、胸横筋の合計13筋(まだあるかもしれません…)
この中でもChest grippingを一番阻害するであろうと考えられるのは下後鋸筋です。
それは単純に下位肋骨に付着し、肋骨の下制を行うからです。
肩や腰への影響とは?
ここで言いたかったのは肩や腰の動作時に
下位肋骨がバケツハンドル運動を行う動作が制限されるのではないかということです。
肩でいえば拳上の動作が体幹を伸展させ、下位肋骨まで運動が波及します。
腰でいえば伸展の動きが下位肋骨の横への広がりがないと遂行できません。
だから痛いところを局所で見るのではなく、全体としてみることが大切です。
もちろん局所が制限が痛みの原因になっている場合もあります。
いかがだったでしょうか。
今回は下位肋骨の動きに焦点をあてて解説を進めてきました。
新しい知識の発見があった方はすぐにでも生かしていただき、すでに知っていた方も再度臨床で生かせるようチャレンジしてほしいと思います。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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