肩関節疾患であれば
上腕二頭筋由来の疼痛を考えることはよくあることかと思います。
上腕二頭筋長頭腱炎やSLAP損傷など多くの障害を持つ可能性があり、
その反面セラピストにとっては治療対象にもなりやすい筋肉と言えるのではないかと思います。
今回は上腕二頭筋の解剖学的な特徴からその機能についての情報をお伝えしたいと思います。
是非ご興味ある方は読み進めていただきたいと思います。
上腕二頭筋の解剖
ここでは通常の上腕二頭筋の起始停止、作用、トリガーポイントなどを載せていますが
上腕二頭筋には走行上にもいくつかの特徴があるため記載します。
上腕二頭筋長頭腱は…
結節間溝滑液鞘の滑液腱鞘に包まれ、
上腕骨の結節間溝、横靭帯で作られたトンネルを通り、
関節包外へと出てから筋腹へと移行する。
よく起こる障害としてはこの結節間溝での滑走が長頭腱炎を誘発するとも言われています。
上腕二頭筋の役割
上腕二頭筋には筋肉による作用以外に大きく分けて二つの機能があります。
1、Depressor機能
2、腱板疎部の補強
この二つになり、今回は特にDepressor機能について詳細をお伝えしたいと思います。
Depressor機能
Depressor機能とは…
上腕二頭筋長頭腱が骨頭を上方から抑える機能になります。
臨床でよく見かける機会の多い腱板断裂(特に大断裂でしょうか)
もしくは腱板損傷を含めるとレントゲン上で
骨頭が臼蓋に対して上方変異している症例をよく目にしますよね。
これは恐らくインナーマッスルである腱板が損傷もしくは断裂することで
腱板の役割である骨頭を求心位に保つ力がおちるため
アウターマッスル(ここでは主に三角筋)が骨頭を求心位に保つ役割を担います。
しかしその三角筋の構造上、停止部が起始部へと向かうと
上方へと向かうベクトルが強くなるため骨頭の上方偏移がみられるのだと思います。
そこで重要となるのが今回のDepressor機能になります。
Depressor機能は
上腕二頭筋長頭腱でで過剰な骨頭の上方偏移を抑制することで
肩峰下滑液包(SAB)の挟み込みや
骨頭の下方へのSlippingを促すことが重要となってきます。
しかし!
骨頭の上方偏移を食い止めるだけに
上腕二頭筋長頭腱のDepressor機能を使えばいいわけではありません。
そもそも腱板損傷や断裂により炎症が生じていたら、
関節包を通じて上腕二頭筋長頭腱にも炎症が蔓延する可能性は十分考えられます。
そのため覚えておいていただきたいのが上腕二頭筋長頭腱の特徴です。
上腕二頭筋長頭腱は内旋位から外旋位になるにつれ伸張ストレスが増していきます。
よく1st外旋では肘関節屈曲位で行いますよね。
しかし上腕二頭筋は二関節筋です。
ということは肘関節伸展位でないと伸張ストレスによる影響は受けにくいということです。
だから単純に関節可動域検査を行い、何が制限になっているのか考えるのではなく、
その筋肉の特徴を考え、条件を変えて評価することで新たな発見があるかもしれません。
腱板損傷・断裂は
無症候性(損傷・断裂はしていても疼痛や可動域制限の症状なし)の方が
およそ半数いらっしゃるといわれています。
そのため一概に腱板の問題が疼痛や可動域制限に直結するかはわかりません。
しかし過負荷がかかり、炎症が起こっていればそこの負担は軽くする必要があります。
今回の情報が皆さんの治療に役立っていただければ嬉しく思います。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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