前回烏口突起からみる肩関節機能 ~筋肉編~では

小胸筋を中心に解説させていただきました。

肩関節疾患ではよく小胸筋に対するアプローチをすると思いますが、

新たな視点で治療の幅が広がったのではないかと思います。

さて今回は同じ烏口突起を中心に靭帯機能に着目して解説していきたいと思います。

養成校時代に習った烏口鎖骨靭帯を今回は少し細かくみていき、

治療に生かせる情報をお伝えしていきます。

 

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烏口突起に付着する4つの靭帯

烏口突起を起点とする靭帯は大きく分けると3つ、細かくわかれば4つあります。

それが…

烏口上腕靭帯、烏口肩峰靭帯、烏口鎖骨靭帯(菱形靭帯、円錐靭帯)になります。

これはもうすでに皆さん承知している情報だと思います。

その中でも今回、特に注目したいのが…

烏口鎖骨靭帯(菱形靭帯、円錐靭帯)”です。

それぞれ説明していきますがその前に…

 

 

烏口鎖骨間メカニズム3つの機能

①鎖骨拳上制限

その名の通り、鎖骨が肩峰上に乗り上げることがないように制限しています。

②肩甲骨懸垂機能

烏口鎖骨靭帯は鎖骨部と連結しており、

肩甲骨を落とすことなく吊り下げ、懸垂しておくことが可能である。

③棘鎖角制限

烏口鎖骨靭帯があるおかげで棘鎖角が大きくなりすぎず、

小さくもなりすぎないように制限され衝撃緩衝にも役立っている。

 

 

烏口鎖骨靭帯それぞれの棘鎖角制限

菱形靭帯

烏口突起基部から鎖骨円錐結節前外側部に付着し、不整な四角形をなす。

棘鎖角制限機能としては棘鎖角が小さくなるのを防いでいる

円錐靭帯

烏口突起基部から鎖骨円錐結節後内側部に付着し、三角形を呈する。

棘鎖角制限機能としては棘鎖角が大きくなるのを防いでいる

 

 

棘鎖角の重要性

私は臨床上、割とこの棘鎖角を意識することが多いように感じています。

棘鎖角は…

約55~70°の範囲で動いているとされ、

胸鎖関節に関しては参考程度ですが評価の一環として

肩を前のめり(肩甲骨屈曲)にさせてみたり、

またその逆である胸を張らせるような動き(肩甲骨伸展)をみています。

そうすることで棘鎖角を制限する因子を探るためです。

そしてどちらに動きにくいまたは動かしやすいかで治療対象になるべきかを評価しています。

ちなみに棘鎖角だけでみれば…

肩甲骨屈曲制限:棘鎖角拡大制限 ⇒ 円錐靭帯制限

肩甲骨伸展制限:棘鎖角縮小制限 ⇒ 菱形靭帯制限

このようになるのではないでしょうか。

 

また胸郭出口症候群などでは鎖骨周囲の動きがとても大切になってきます。

斜角筋症候群や小胸筋症候群だけに目をとらわれないように

是非靭帯系にも着目していただきたいと思います。

 

 

いかがだったでしょうか。

これでまた違った見方が一つ増えたのではないでしょうか。

もちろん肩甲帯屈曲が全て円錐靭帯の制限とは決まってはいません。

他にも考慮すべきものはたくさんあります。

しかし今回の烏口鎖骨靭帯の情報が少しでも臨床で生かされれば嬉しく思います。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。