外傷などはないものの上肢に放散される痛み・痺れなどの症状を訴える患者さん多くないですか?
上肢への痛み・痺れの出現する代表的な疾患と言えばやはり胸郭出口症候群ではないでしょうか。
今回はC7~Th2を中心とする頚肋と第1、2肋骨の構造、特に斜角筋群を中心に胸郭出口症候群をみていきたいと思います。
頚肋の特徴
まず初めに頚肋に関してですがこれには個人差があります。
およそ日本人の1%程度にしか相当しない数ですが先天性異常として見受けられるそうです。
この頚肋は第7頸椎の横突起から起こり、浮遊して終わるものから鎖骨下動脈上を通り第1肋軟骨や胸骨まで付着するものなど停止に関しては様々な形態をもつと言われています。
頚肋由来の胸郭出口症候群としては動・静脈型圧迫による症状を呈することが多いとされています。
上位肋骨の特徴
次に第1、2肋骨からみる胸郭出口症候群をみていきましょう。
ここでは胸郭出口症候群における「神経型」に目を向けていきます。
神経型は第1、2肋骨の形状というよりはそれに付着する前斜角筋と中斜角筋由来の症状出現がメインになります。
これは斜角筋群の神経への癒着や神経圧迫、斜角筋群付着異常などが挙げられます。
しかし神経型だけではありません。
第1肋骨に関して説明すると前斜角筋の停止部前に鎖骨下静脈が通り、その後ろを鎖骨下動脈が通ります。そしてそのまた後方に中斜角筋停止部が存在します。
要するに神経型、動・静脈型両方において第1、2肋骨を中心とする斜角筋群の影響が多いことを示唆しています。
胸郭出口症候群
発生頻度
発生頻度としては神経型が8割程度と多く、比較的若年層に起こりやすく、特に痩せ型の女性(なで肩の牽引型とも言われます)によく見られます。
症状
上肢全体に広がる痛み(腕神経叢の圧迫部位により症状が局所に出る場合もあります)、痺れ、脱力感や知覚異常を認めるケースもあります。
理学検査による病態鑑別は教本レベルの知識なので割愛しますが最後に動・静脈型と神経型の症状について話しておきたいと思います。
症状鑑別
もちろん理学検査により疑っていくのですが絞扼部位が近いため混同することがあります。
そんな中で私の経験として神経型は割と症状部位を的確に患者さんが言えることだと感じています。
しかし動・静脈型に関しては血管原性疼痛のため、症状を的確に伝えられません。
例えば大体、腕全体が痛いだとかここら辺が気持ち悪いとかそのような表現をされることが多いような気がします。
これに関しては全くのエビデンスがなく、主観的評価になってしまいますが、皆さんにも多くの症例を経験してもらい、ご自身の中で治療に対する考え方や捉え方を確立していただければと思います。
いかがだったでしょうか。
やはり解説していて感じたのは解剖の大切さです。
特に斜角筋周囲の筋肉と動・静脈との絡み、これに神経系まで関与してくればなおさら複雑になります。
ですがこれをしっかり押さえておくことで治療への第1歩が踏み出せるのではないかと思います。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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