棘上筋腱にある“Critical zone”は皆さんご存知かと思います。
養成校時代に肩関節の章で習い、
よく定期テストでも出題傾向が高い、言葉です。
しかし臨床に出てからは言葉にすることも少なくなり、
そうすると忘れてしまったりしてしまします。
今回はこのCritical zoneの解剖の復習から病態まで説明し、
Critical zoneにおける肩関節痛をみていきたいと思います。
Critical zoneの解剖
Critical zoneは
棘上筋付着部の大結節から近位約1㎝内側にある部位
のことを指します。
ここは棘上筋からくる肩甲上動脈と
上腕骨からくる前回旋動脈が吻合している場所で
棘上筋が弛緩している状態では血行状態も良好ですが、
肩関節を下方に牽引されたり、
第2肩関節のところで挙上や外転などの動作により
圧迫されると血管自体も圧迫され虚血になり、脆弱化します。
また退行変性も受けやすい部位であり、
肩関節周囲炎を四十肩や五十肩と呼ぶのも退行変性と
比較的活動量もある年齢であることから
好発年齢に近い言葉ができてきたのではないかと思います。
通常中間位での姿勢では
Critical zoneは肩峰下に位置するため
触診することができません。
触診をするのであれば前方へ引き出す必要性があるため
肩関節伸展+内転+内旋
の複合運動で肩前方部にて触診することが可能です。
Critical zoneの病態
この分野で注目したいのがCritical zoneにおける
「カルシウム沈着」になります。
整形外科ので疾患名は
“石灰沈着性腱炎”や“カルシウム沈着性腱炎”
などと呼ばれいてるかと思います。
そのカルシウム沈着性腱炎ですが
肩関節疾患の中でも特に激痛であることが有名です。
中には動作時痛のみの症状の方もおられますが、
ひどい方は安静時痛や夜間時痛などで
日常生活に支障をきたすような方までいらっしゃいます。
このカルシウム沈着ですが原因は
女性ホルモン減少による破骨細胞増加が
骨代謝のバランスを崩して起こるケースや
単なるカルシウム摂取不足によって
骨を自ら溶かして対応するケースなどが考えられるそうです。
それが今回の場合で言いますと
Critical zoneの腱内に沈着し、石灰化することで
(ちなみに石灰化するだけでは痛みは生じません)
周囲にあるSAB(肩峰下滑液包)などに
影響を及ぼすことで損傷されたりすると
炎症反応を起こし、強い疼痛を引き起こすことになります。
カルシウム沈着の対処法
まず徒手によって石灰化を解消させることは困難であり、
また激痛であるためリハビリを行うこと自体困難なことがあります。
医師としてはステロイド注射などの選択肢があるでしょうが、
治療者の立場としたらどのように痛みを回避できるか、
また日常生活指導が大切でしょうか。
肩関節の多用・乱用を防ぎ、
一刻も早く炎症を鎮めて石灰化の吸収を待ちます。
他にも原因の一つでもある
カルシウム不足の改善や酸化体質の方は
石灰化を起こす原因にもなります。
そのため酸化体質を改善するために
有酸素運動を勧めたり、油分摂取を抑えるなどの
工夫が必要かもしれません。
ちなみに棘上筋腱内に写る石灰化は
剥離骨折と間違えられることがあります。
石灰化に関しては楕円形で端々が丸く、滑らかなのに対して
剥離骨折は骨から剥離しているので端々が刺々しい形をしているのが特徴です。
同じように見えても対処法は違うと思うので
注意してレントゲン確認していただきたいと思います。
もちろん言うまでもなく問診も大事です。
いかがだったでしょうか。
今回はすぐに治療へ生かせる情報ではありませんが
患者さんのことを理解するうえでは
とても重要なことだと思っています。
出来るだけ診断名などにとらわれず、
患者さんそのものを個人個人で
みていけるようになっていただければと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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