頚部伸展(後屈)時の痛みを持つ方、

結構多くありませんか?

 

整形外科クリニックなどで働いていれば、

頚肩腕症候群、頚椎症、頸椎捻挫、

頚椎椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群など…

 

様々な診断名がついた患者さんの頚椎治療を

する機会が多いと思います。

 

先に誤解のないよう言っておきますが、

全ての診断名で頚部伸展時痛がある!

というわけではないので注意してください。

 

今回は私が担当した患者さんを例に

頚部伸展時の肩甲骨内側の痛みについて

考察を述べていきたいと思います。

 

きっとこれを読めば、

頚部伸展時痛軽減に役立つし、

今後胸郭周囲の疼痛に一役買う内容に

なっていると思います。

 

是非ご自分の担当患者さんを思い出し、

頚部伸展時の痛み、特に肩甲骨内側にあたる

痛みを抱えた方がいらっしゃったら、

参考にしていただきたいと思います。

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患者基本情報

年齢:50代

性別:女性

仕事:歯科技工士

経過:2年ほど前から頚部痛あり。

   2~3週間前から疼痛増悪し、痛みが

   引かないため内服とリハビリ開始。

 

※個人情報に関しては詳細を書けないため

ご了承ください。

 

ここからは情報を単発的に出していきます。

 

この方が初診できた際には、

頚部から肩甲帯内側・僧帽筋上部線維に沿い

動作時痛を認めていた。

 

姿勢は頭部前方位(FHP)であり、

肩甲骨も外転保持されていた。

 

頚椎レントゲン上では

ストレートネックに近い状態にあり、

頚椎の前弯が消失しつつあった。

 

仕事柄、常に頚部屈曲位

細かい作業をするため常に肩凝りに

悩まされ続けてきたらしい。

 

【頚椎関節可動域】

前屈:50°(P) 

後屈:20°(P)

側屈:30°(P)/30°(P)

回旋:50°(P)/50°(P)

(うろ覚えなため正確な数字ではないです)

⇒ 頚椎伸展以外は引っ張られる痛み

頚椎伸展は詰まるような鋭痛

 

肩甲帯・上肢の可動域制限なし。

むしろ手を挙げて伸びをすると気持ちいいと

 

【頚椎整形外科的テスト】

ジャクソン(+)

スパーリング(+)

⇒ Dr.が診察時に行ったテスト

(本人曰く痛みはあったが放散痛はなし

胸郭出口症候群に関するテスト 全て(-)

 

さぁこれらの情報からあなたなら

どう考えますか?

 

考察を助ける知識

今回着目したいのは頚椎後屈時の痛み。

週1回の治療である程度、頚椎後屈以外の

疼痛は軽減傾向にありました。

 

恐らく筋筋膜性の疼痛がメインだったため。

筋肉に伸張感を与えると症状と合致。

 

僧帽筋上部線維・斜角筋など

頚部と胸郭を結ぶ筋肉に柔軟性を与えると

割とすぐに症状は軽くなりました。

 

もちろん仕事中の姿勢に関しても

指導を行いました。

 

しかし厄介だったのが今回のテーマである

”頚椎伸展時の肩甲骨内側の痛み”

 

実際一回で症状が無くなったわけでは

ありませんが、NRSで言うと…

10/10(初回) ⇒ 2/10(4回目の治療)

まで減りました。

 

しかも疼痛部位には触れずにやりました。

タイトルにも書きましたが、

「テコ」

これを使って治療したからです。

 

胸椎・胸郭は人体No.1の…

以前どこかの記事に書いたかもしれませんが

胸椎・胸郭って人体の中で最も…

関節数が多いユニットです!

 

胸椎椎間板関節・胸椎椎間関節・胸肋鎖関節

胸肋関節・肋横突関節…などなど

 

およそ150前後の関節があるとされています。

 

もちろん一つ一つは小さい動きですが、

一つの関節が機能障害を起こすと、連鎖的に

機能障害が蔓延する可能性があります。

 

おまけに長時間の前傾姿勢は、

胸郭を屈曲方向に固めている状態です。

 

そのため時折、仕事中に伸びをすることで

胸郭の一方向への動きを解放し、楽になる

感じが得られていたんだと思います。

 

そこで私が使ったのは、

肋骨へのアプローチです。

 

患者さんが痛がっていたのは、

胸椎1、2番の左側でした。

 

そこで胸郭前方である

胸肋鎖関節と胸肋関節を形成する肋骨に

治療していきました。

 

治療の考え方としては至極簡単なことしか

していません。

 

胸郭の動きで、

・ポンプハンドル

・バケツハンドル

この動きの意味をご存知ですか?

 

以前も説明したと思いますが、

簡単に復習しておきたいと思います。

 

【ポンプハンドル】

肋骨上部の肋骨の動きで

矢状面上の前額軸で前後径の動きを担う

吸気に前上方へ広がり、呼気で後下方に戻る

 

【バケツハンドル】

肋骨下部の肋骨の動きで

前額面上の矢状軸で横径の動きを担う

吸気に外上方へ広がり、呼気で内下方に戻る

 

大雑把に言えばこのような動きをしています

 

そして今回の患者さんは、

肩甲骨内側に痛みを感じていた。

 

つまりは身体後面ですよね。

 

それに対して私はこの肋骨の動きを参考に

前方からアプローチしました。

 

それは何故か?

 

答えは先に言った「テコを使う」

という事なんですが、

では何故テコを使うのか?

 

理由は一つ!

「大きく動かせるから!」

 

痛みの場所は教えてもらっていましたが、

実際に言うとどこか分かっていませんでした

 

胸椎椎間関節?

肋骨頭関節?

肋横突関節?

 

はっきり言って密集しすぎてて

よく分かりません。

 

それに直接疼痛部位に

アプローチするとなると

かなりの触診技術が必要となります。

 

関節が密集している上に関節の動きが小さい

という特徴があるからです。

 

しかしこれをテコを使うと簡単です。

 

テコって離れれば離れるほど

動きが大きくなります。

 

肩関節とか股関節とかで考えれば簡単。

 

腕をぐるぐる回した時に指先は、

めちゃくちゃ動き回っていますよね?

でも骨頭のところは臼蓋に収まり、

円運動を続けている。

 

テコを使えば遠ければ遠いほど

大きく動かさないといけません。

 

逆に言うと、細かくて分かりにくい所は

末端を大きく動かして動きの集まる

小さな動きの場所にアプローチする

ということが可能になるんです。

 

これは肋横突関節とか肋骨頭関節でも一緒

細かくて分かりにくい場所を動かしたいなら

遠く離れた胸郭前方から動かすことで

より簡単に動きを作ることができるんです。

 

同じようなことを話して文章がダラダラ

なってしまいましたが、この方法を使って

深呼吸に上肢の動きを合わせて

胸郭(肋骨)を動かすことで痛みの軽減を

図ることができました。

 

しかし全ての痛みが消失したわけでは

ないのでこの患者さんの評価はまだ続きます

 

まぁでも今回の

「頚椎伸展時の肩甲骨内側の痛み」

テコを使い、アプローチした方法

是非あなたの臨床でも使ってみてください。

 

かなり胸郭が硬くて

ビックリするかもしれません。

 

普段あまり触りなれないところなので、

やってみると何らかの効果を得られるかも

しれません。

 

でも女性の患者さんの場合は胸に気を付けて

触ってくださいね!

 

「セクハラ!」

なんて言われた日には大変な事に

なりかねませんからね…

 

それでは今回も最後までお付き合いいただき

ありがとうございました。