回外筋と言えば…
その名の通り、前腕を回外させる筋肉の事でしょ!?とか
それ以外の特徴って…知らない!!
回外筋のイメージと言えば、回外!それしかありません!
学生時代の知識だけで回外筋を語るならこれ以上は無理ですよね…
でも回外筋もじっくり調べていくとたくさんの発見があります。
特に今まで回外筋なんて治療の範疇になかった!という方に読んでいただきたい内容になっています。
まずは回外筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴について解説していきたいと思います。
是非これを読んで今後あなたの肘関節、特に回外筋の治療に生かしてほしいです。
見出し
回外筋の解剖
画像引用(一部改変):Anatomography
回外筋(supinator) | |
---|---|
起始 | 上腕骨外側上顆、尺骨回外筋稜、橈骨側副靭帯、橈骨輪状靭帯 |
停止 | 橈骨近位1/3外側面 |
作用 | 前腕回外 |
神経支配 | 橈骨神経(C5~7) |
トリガーポイント | 橈骨腹側の回外筋筋腹、上腕二頭筋の遠位外側付近 |
関連痛 | 外側上顆を中心に肘関節外側付近から 第1、2指背側の中手骨・基節骨付近まで |
回外筋のストレッチ
※後日、掲載いたします。
回外筋の特徴
特徴1 回外主動作筋
画像引用(一部改変):Anatomography
回外筋 = 前腕回外主動作筋
そんなこと言われなくたってわかってる!という声が聞こえてきそうですが…
”回外筋”というくらいですから当たり前のように前腕を回外させる主動作筋になります。
ではそれ以外に前腕を回外させる筋肉と言えば…
・上腕二頭筋
これだけです。
他にはないのかと言われれば…
・長母趾外転筋
しかしこの筋は補助的な役割が主で解剖学の本によってその作用はまちまちです。
とにかく確定していることは、前腕を回外させる筋肉は…
・回外筋
・上腕二頭筋
この2つの筋肉であるということ。
それでは少し回外する際に重要な橈骨輪状靭帯について解説したいと思います。
橈骨輪状靭帯とは…橈骨頭を関節包外から包み込んで尺骨にまで付着する靭帯の事をいう。
この橈骨輪状靭帯があることで上橈尺関節が安定し、前腕の回内外を行うことができる。
ちなみに橈骨頭がこの橈骨輪状靭帯から抜け出し、脱臼することを”肘内障”という。
幼い子供が急に親から手を引っ張られたりした時に起こりやすい外傷になります。
さて話は戻りますが、この橈骨輪状靭帯、回外筋の起始の一部を担っています。
そのため橈骨輪状靭帯の線維化や柔軟性の低下は回外筋にも影響を及ぼします。
もし前腕の回内外に可動域制限や運動時痛があれば着目すべき組織の一つであるということが言えます。
前腕回内外に重要な橈骨輪状靭帯の柔軟性、これと回外筋は組織同士の繋がりがあることを是非覚えておいてください。
特徴2 橈骨神経との関係
画像引用(一部改変):Anatomography
回外筋と橈骨神経との関係。
作業療法士の方であれば、上肢疾患を診ることも多いでしょうから知っている方も多いと思います。
ここでキーワードとなる言葉は大きく2つ。
・橈骨神経高位麻痺、低位麻痺
・Frohseのアーケード
この言葉を知っていて理解していれば何ら問題ありません。
では解説していきましょう。
まずは【橈骨神経高位麻痺、低位麻痺】についてです。
恐らく、聞いたことあるけどなんだったけ?という方が多いのではないでしょうか。
簡単に言えば、橈骨神経が絞扼・障害される部位の違いです。
・高位麻痺 ⇒ 上腕部・上腕外側筋間中隔
・低位麻痺 ⇒ 回外筋部
これによって症状も違います。
・高位麻痺 ⇒ 下垂手、感覚障害(+)、Tinel Sign(+)
・低位麻痺 ⇒ 下垂指、感覚障害(-)、Tinel Sign(-)
全くこの通りになるわけではありませんが、このように比較することができます。
また名称も異なります。
・高位麻痺 ⇒ 広義の橈骨神経麻痺、橈骨神経高位麻痺
・低位麻痺 ⇒ 橈骨神経低位麻痺、後骨間神経麻痺
このように名称が異なっているため、混同しないように気をつけてください。
次に橈骨神経低位麻痺(後骨間神経麻痺)と関係が深い【Frohseのアーケード】について解説していきます。
画像引用(一部改変):Anatomography
Frohseのアーケードとは…回外筋が作る橈骨神経の通るルートのこと。
回外筋は細かく見れば筋肉が浅層と深層に分かれ、橈骨神経が通過するそのアーチ型の通路の事を”Frohseのアーケード”と呼んでいます。
ここでの絞扼が低位麻痺、後骨間神経麻痺と言われ、上記の症状へと繋がっていきます。
ちなみに感覚障害、Tinel Signが陰性なのは、Frohseのアーケードを通る神経が分枝した運動神経のみが通過し、感覚神経は通過しないからです。
回外筋が作る橈骨神経の通路である”Frohseのアーケード”、是非覚えておいてください。
特徴3 他筋肉との連結
画像引用(一部改変):Anatomography
回外筋は解剖学でみると見た目上そんなに大きな筋肉ではありませんし、機能的に見ても前腕の回外にしか作用しないにも関わらず、なかなか多くの筋肉と筋連結しています。
その筋肉は実に…7つ!
順番にあげていきます。
・肘筋
・総指伸筋
・小指伸筋
・深指屈筋
・長母趾屈筋
・長母趾外転筋
・短橈側手根伸筋
この7つの筋肉と筋連結しているとされています。
こうやって見ると屈筋や伸筋まんべんなく、そして特に手関節外在筋との関係が深いようにも感じます。
直接筋線維同士の繋がりではなくても骨間膜を介して繋がりがある筋肉もあるようなので参考までに見ていただければと思います。
もちろん繋がりがある以上、影響を及ぼし合うことは必須で重要な筋肉の一つであるということが言えるでしょう。
まとめ
特徴1 回外筋と上腕二頭筋は回外主動作筋
特徴2 回外筋は橈骨神経低位麻痺を起こす
特徴3 回外筋は7つの筋肉と繋がりがある
いかがだったでしょうか。
普段、あまり意識しない回外筋ですが、このよう内容を見れば少しは重要な筋肉の一つではないかと理解していただけたのではないでしょうか。
上肢疾患を診る診ないに限らず、知っておいて損はない知識だと思うので是非覚えておいてほしいと思います。
今回も最後までお付き合いいただきまして本当にありがとうございました。
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