小・大菱形筋と言えば…

肩甲骨の内側に付いてる筋肉でしょ!?とか

あれ?確か小菱形筋が上だったような…とか

菱形筋のイメージと言えば、このようなことを思い出す人も多いと思います。

肩関節疾患の治療にあたるセラピストの方なら結構治療する機会もあると思いますが、そんな小・大菱形筋の本当の重要性を理解されてますか?

これらの特徴を知ればなお一層、小・大菱形筋に対しての治療が明確に行えるのではないかと思います。

そこで今回は小・大菱形筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴について解説していきたいと思います。

是非これを読んで小・大菱形筋の治療に生かしていただきたいと思います。

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小菱形筋の解剖

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画像引用(一部改変):Anatomography

小菱形筋(rhomboid minor)
起始 C6~C7棘突起、項靭帯
停止 肩甲骨内側縁上部
作用 肩甲骨内転、下方回旋、上方移動
神経支配 肩甲背神経(C4~C6)
トリガーポイント 肩甲骨内側縁付近に複数点在
関連痛 肩甲骨内側縁から棘上窩付近
関連臓器 心臓

 

大菱形筋の解剖

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画像引用(一部改変):Anatomography

大菱形筋(rhomboid major)
起始 Th1~Th4棘突起、棘間靭帯
停止 肩甲骨内側縁下部
作用 肩甲骨内転、下方回旋
神経支配 肩甲背神経(C4~C6)
トリガーポイント 肩甲骨内側縁付近に複数点在
関連痛 肩甲骨内側縁から棘上窩付近
関連臓器 心臓

 

小・大菱形筋のストレッチ

※後日、掲載いたします。

 

小・大菱形筋の特徴

特徴1 前鋸筋との関係

ダウンロード (48)

画像引用(一部改変):Anatomography

これは以前、【前鋸筋】のページでも解説しましたが、再度解説させていただきます。

菱形筋と前鋸筋、それぞれの主な肩甲帯に及ぼす作用を比較すると…

・菱形筋 ⇒ 肩甲骨下方回旋、内転

・前鋸筋 ⇒ 肩甲骨上方回旋、外転

こうやって比較するとよくわかりますが、作用が全くの逆であるということ!

つまりは両筋は…拮抗筋ということになります。

しかしこれだけではこの両筋の関係は終わりません。

ご存知の方もいるかと思いますが、両筋は肩甲骨内側で筋連結しています。

そして筋連結している両筋は…

肩甲骨を胸郭へと固定する、押し付けるという役割の元、共同筋としても働くのです!

そのため菱形筋と前鋸筋との関係は拮抗筋でありながら共同筋であるという不思議な関係性にあります。

少し難しい言い方をすれば…

肩甲骨面では拮抗筋であり、肩甲骨軸面では共同筋である。

このような言い方をすることもできると思います。

是非参考にしてみてください。

特徴2 Tippingという評価法

ダウンロード (50)

画像引用(一部改変):Anatomography

これも先ほどの【前鋸筋】のページで簡単に解説しましたTippingという肩甲骨の柔軟性を診る評価法ですが、菱形筋も関係してくるため解説させていただきます。

Tippingとは…結帯動作に肩甲骨下角が浮き上がってくる状態のことを指しています。

この肩甲骨のTippingを観察できると肩甲骨周りの筋肉に十分な柔軟性があることを示しています。

そしてこのTippingに関与する重要な筋肉が…

小胸筋と前鋸筋であるとされています。

あれ?菱形筋は?

と思った方もいらっしゃるのではないかと思います。

菱形筋ももちろん関与してくるのですが、菱形筋は他動的に動かす時により重要な評価へと繋がります。

評価方法は至って簡単です。

患側を上にした側臥位で、肩甲骨内側に手を入れる

これだけです。

この評価法で自動で結帯動作をする時よりも他動で肩甲骨周りの柔軟性を診る時の方が、より菱形筋も含めた肩甲骨周りの柔軟性が分かるからです。

答えは簡単明瞭。菱形筋が肩甲骨に手を入れる肩甲骨内側に付いているからです。

だからこの時点で肩甲骨に手(指)が入らない場合、自動運動で結帯動作をしてもらってもなかなかうまくできないか、代償動作により動作を完遂しようとします。

結帯動作を改善しようとするなら…

小胸筋・前鋸筋は当然のことながら、菱形筋の柔軟性までチェックしておいた方がいいと思います。

特徴3 僧帽筋との関係

ダウンロード (51)

画像引用(一部改変):Anatomography

先ほどの【特徴1】では菱形筋と前鋸筋との関係について解説しましたが、次は…

菱形筋と僧帽筋との関係です。

この菱形筋と僧帽筋もある動きは拮抗筋でありながら、またある動きでは共同筋として働きます。

ではその両筋の作用をみていきましょう。

・菱形筋 ⇒ 肩甲骨下方回旋、内転

・僧帽筋 ⇒ 肩甲骨上方回旋、内転

これを見てわかるように…

・拮抗 ⇒ 肩甲骨回旋方向

・共同 ⇒ 肩甲骨内転運動

皆さんご存知のように菱形筋は僧帽筋に覆われています。

そのため動きも同じかと思いきや、筋の走行によりこのような違いが出てきます。

参考までに解説しておきますと…

・最表層(第1層) ⇒ 僧帽筋

・中間層(第2層) ⇒ 菱形筋

・最深層(第3層) ⇒ 上後鋸筋

このように筋肉の層ができています。

上後鋸筋に関しては強制吸気筋として知られ、肋骨の拳上を行う筋肉です。

菱形筋と僧帽筋との関係、さらにその深層に上後鋸筋が存在するということを覚えておいて損はないと思います。

 

まとめ

特徴1 前鋸筋と拮抗筋・共同筋の関係にある
特徴2 結帯動作に必要なTippingという評価法
特徴3 僧帽筋と拮抗筋・共同筋の関係にある

 

いかがだったでしょうか。

小・大菱形筋、覚えていてもなかなか臨床で生かせるような内容は覚えていなかったりします。

今回の内容は考えながら使えば必ず臨床でも役立つ内容になってます。

是非、臨床の場で生かせるように役立てればと思います。

今回も最後までご覧いただきまして本当にありがとうございました。