梨状筋と言えば…
外旋六筋の1つでしょ?とか
腹臥位になって押せば痛気持ちいい筋肉でしょ?とか
こんなイメージを持っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
外旋六筋の中でも特別、理解が深い梨状筋は坐骨神経との関係があるからだと理解しています。
でもそれ以上に梨状筋のこと知っていますか?
これで梨状筋の特徴を押さえればより梨状筋への理解が深まります。
そこで今回は梨状筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴を解説していきたいと思います。
見出し
梨状筋の解剖
画像引用(一部改変):Anatomography
梨状筋(piriformis) | |
---|---|
起始 | 仙骨前面上方にある3つの前仙骨孔間周囲 |
停止 | 大腿骨大転子上縁 |
作用 | 大腿骨外旋 |
神経支配 | 坐骨神経叢(L5~S2) |
トリガーポイント | ① 梨状筋停止部付近の筋腹 ② 梨状筋起始部付近の筋腹 |
関連痛 | ① 大転子周囲を中心に殿部全体から大腿後面まで ② トリガーポイント周囲を中心に殿部全体から大腿後面まで |
関連臓器 | 膀胱、S状結腸、直腸、子宮、卵巣、前立腺 |
梨状筋のストレッチ
※後日、掲載いたします。
梨状筋の特徴
特徴1 股関節屈曲角度による違い
画像引用(一部改変):Anatomography
梨状筋は外旋六筋の一つのため一般的な作用は【股関節外旋】で通ると思います。
しかし最近では…
股関節内旋作用もあると度々報告されています。
股関節の外旋作用と内旋作用?動きとしては対照的な動きですがどのように作用するのか、それは…
股関節の屈曲角度によって区別されます。簡単に説明すれば…
股関節外旋 ⇒ 股関節0~40°
股関節内旋 ⇒ 股関節60°以上
梨状筋は股関節の屈曲角度が変わることで股関節の軸との関係上、作用が変化します。
もちろん60°できっかり作用が変わるわけではなく、40~60°は中間位でお互いの作用を打ち消し合うような状態でもあります。
これを理解すればストレッチの方法や治療する際の参考になります。
股関節0~40° ⇒ 内旋ストレッチ
股関節60°以上 ⇒ 外旋ストレッチ
このような感じで工夫すればより梨状筋を効果的に狙ったストレッチをすることも可能です。
特徴2 梨状筋と坐骨神経の関係
画像引用(一部改変):Anatomography
ここでわざわざ言及する必要もないくらい皆さんご存知の知識だと思いますが、いくつか補足して説明します。
梨状筋は坐骨神経を圧迫し、坐骨神経痛を及ぼす筋肉として有名です。
その坐骨神経は人体の中で最も太い神経として知られていて多くの筋肉を支配しています。
そんな坐骨神経は仙骨神経叢から出た神経が束になっています。
坐骨神経は大坐骨孔を出る際に梨状筋の下(梨状筋下孔)を通り、骨盤の外へと出ていきます。
この時、梨状筋の下を通るときに上から覆いかぶさるのはもちろん梨状筋ですが、下を支えるのは大腿方形筋がクッションの役割をしています。
そのため坐骨神経への圧迫は梨状筋の線維化や筋スパズムなどでも起こりますが、その下を支える大腿方形筋の状態も考慮される必要があります。
いくら梨状筋の硬さがあっても反対側の大腿方形筋が柔軟であれば圧迫を避けられる可能性もあります。
そのため坐骨神経痛=梨状筋が硬いんだ!と決めつけないように気を付けましょう。
また坐骨神経の通過にはいくつかの異常も見られます。
・梨状筋を割ってその間を通過するもの
・坐骨神経自体が二股になり、分かれて梨状筋上孔と下孔を通過するもの
・一方は梨状筋下孔、もう一方は梨状筋を割って通過するもの
様々な坐骨神経の通過異常があると言われています。
しかしこれらは全体の1~2割程度しか存在しないようです。
参考までに知っていただければと思います。
特徴3 梨状筋が及ぼす特徴的な症状
画像引用(一部改変):Anatomography
梨状筋と言えば、先ほど挙げた坐骨神経痛との関係を真っ先に思い浮かべる方が多いと思います。
しかし梨状筋は他にも骨盤内の臓器(生殖器関係)との関係も深いと言われています。
その理由は…
泌尿器系や生殖器系との関係がある神経や血管が梨状筋の下を通過するからです。
先ほども説明した梨状筋下孔、坐骨神経が通ることで有名ですが、他にも多くの神経や血管が通過しています。
梨状筋下孔 ⇒ 坐骨神経・下殿神経・陰部神経・後大腿皮神経
坐骨神経伴走動脈・下殿動静脈・内陰部動静脈
上記のこれら全てが通過します。
ちなみに…
梨状筋上孔 ⇒ 上殿神経・上殿動静脈
これらが通過し、梨状筋の周りだけでこれだけ多くの神経・血管が関与しています。
特に泌尿器・生殖器系の問題なら陰部神経・内陰部動静脈が関係してきます。
適切なアプローチ方法は分からないためこれ以上は控えますが、梨状筋がこのような範囲の症状にまで及ぼす影響が考えられることだけは知っておいてほしいと思います。
まとめ
特徴1 股関節屈曲60°以上では内旋作用
特徴2 坐骨神経痛も様々な種類が存在する
特徴3 泌尿器・生殖器系とも関連がある
いかがだったでしょうか。
普段、意識している梨状筋より少し知識が膨らみましたか?
まずは多くを知ることで推論する時の幅に広がりが持てます。
是非お困りの患者さんやご家族の方のために生かしてほしいと思います。
今回も最後までご覧いただきまして本当にありがとうございました。
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