小胸筋と言えば…
大胸筋に覆われている小さな筋肉!とか
小さい筋肉だからあんまり治療しない…とか
小胸筋のイメージと言われればこのようなことを想像する方が多いのではないでしょうか。
確かに小胸筋は大胸筋に覆われた小さな筋肉なのであまり積極的に治療する方は多くないかと思います。
しかし最近では大胸筋 < 小胸筋の方が肩関節疾患に及ぼす影響が大きく、重要視されてきているように感じます。
そこで今回はこの小胸筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴について解説していきたいと思います。
見出し
小胸筋の解剖
画像引用(一部改変):Anatomography
小胸筋(pectoralis minor) | |
---|---|
起始 | 第2,3~5肋骨 |
停止 | 烏口突起 |
作用 | 肩甲骨下制、下方回旋 肩甲骨固定し肋骨を挙上し、吸気を補助 |
神経支配 | 内・外側胸筋神経(C7、8) |
トリガーポイント | ① 第4肋骨起始部付近 ② 烏口突起下付近 |
関連痛 | 三角筋部前面、胸部から上肢尺側、第3~5指掌面 |
関連臓器 | 心臓 |
小胸筋のストレッチ
※後日、掲載いたします。
小胸筋の特徴
特徴1 肩関節の筋肉で唯一…
画像引用(一部改変):Anatomography
まず小胸筋で解説すべきポイントは…
肩関節に関係する筋肉の中で唯一、上肢への付着を持たない筋肉であるということです。
小胸筋の起始停止は、第3-5肋骨~烏口突起まで流れです。
もちろん先ほど説明したように上肢への付着は持ちません。
しかし烏口突起につくことで肩甲骨を介して肩関節に多大な影響を及ぼします。
またそれとは別に小胸筋の一部線維は烏口突起を介して烏口上腕靭帯と線維を交えているとされています。
そのため小胸筋の筋スパズムや線維化が烏口上腕靭帯を通じて肩関節に影響を与えることも考えられます。
ちなみに烏口上腕靭帯は…
・肩関節伸展・内転・1st外旋に対して制限する
このように言われています。
まずは…
・小胸筋は肩関節に関係する筋肉で唯一、上肢に付着していない
・小胸筋の一部線維は烏口上腕靭帯と交わり、上腕骨へと付着する
これを覚えておいてほしいと思います。
特徴2 肩関節可動域制限との関係
画像引用(一部改変):Anatomography
小胸筋が肩関節の可動域制限と関わる重要なポイントは2つ…
①肩甲骨の後傾
②肩甲骨の下方回旋
大きく挙げればこの2つです。
まず①肩甲骨の後傾から解説していきます。
矢状面から小胸筋を観察すると、起始は停止より前に付いています。
ということは…小胸筋は肩甲骨を前に倒す、要は前傾させる働きがあるということ。
逆に言うと…小胸筋が硬い(筋スパズムや線維化)状態なら、前傾したままで後傾できない。ということも言えます。
肩関節の運動で考えてもらうと、上肢拳上や外転では肩甲帯の上方回旋などが着目されやすいですが、拳上や外転が90°を超えるようなあたりから肩甲帯は後傾してきます。
だから小胸筋が筋スパズムや線維化がある状態だと柔軟性がないため肩甲骨が後傾できません。
そのため肩関節が拘縮のように止まるわけではありませんが、ある程度の代償運動を伴ったような状態で可動域制限に関与します。
そして②肩甲骨の下方回旋についてです。
肩甲骨の内転に関しては先にも触れたように肩関節の上方への運動には上方回旋が必要ですが、小胸筋はこれに対抗するように肩甲骨下方回旋方向へと働きます。
これも先ほどと同じように筋スパズムや線維化によって短縮方向にあることで肩甲骨の上方回旋を妨げ、関節可動域制限を起こしたり、または過剰な肩甲上腕関節の運動により痛みを引き起こしてしまう可能性も考えられます。
上記の2つのポイントをみても小胸筋が上肢に与える影響はとても大きいものだと言えることができます。
是非、小胸筋に着目した上での関節可動域制限にも目を配ってほしいと思います。
ポイントは…肩甲上腕関節の制限でなく、肩甲帯での制限です。
特徴3 腕神経叢との関係
画像引用(一部改変):Anatomography
腕神経叢との関係については【肩甲下筋】のページでも簡単に触れましたが再度説明させていただきます。
腕神経叢は鎖骨下を通り、上肢へと走る途中で胸郭側面を走りますが、その際…
小胸筋・肩甲下筋・前鋸筋と3方向に囲まれた状態で通過していきます。
その中でも特に小胸筋は”胸郭出口症候群”の中でも原因のなかの一つとして考えられています。
(wright test:上肢外転・外旋90°、肘屈曲90°のお手上げの様な状態で橈骨動脈を触知する方法)
これは小胸筋下で腕神経叢と腋窩動静脈を圧迫すると上肢への症状が出現します。
もちろん3方向から囲んでいるような状態のため、小胸筋だけでなく、肩甲下筋や前鋸筋の柔軟性も影響してきますが、特に小胸筋は腕神経叢と深い関係性にあることは理解されておいた方がいいと思います。
そしてアプローチする場合には是非、肩甲下筋・前鋸筋も念頭に置いていてほしいと思います。
まとめ
特徴1 小胸筋は唯一、上肢に付着しない筋肉である
特徴2 肩関節拳上時に必要な肩甲骨後傾を阻害する
特徴3 腕神経叢を圧迫し、胸郭出口症候群へと発展
いかがだったでしょうか。
小胸筋に対してあまり知識がなかった人でもただ単に大胸筋に覆われている小さな筋肉ではない!ということは理解していただけたのではないでしょうか。
しかし大胸筋と同様、場所が場所のためなかなかアプローチしづらい場所でもあります。
ですが、肩関節の治療においては重要なポイントとなる可能性が大きいので是非、臨床で活用していただけたらと思います。
今回も最後までご覧いただきまして本当にありがとうございました。
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