小指対立筋と言えば…

その名の通り、小指側に付く対立運動筋かな?

それ以外だったら…出てこないな…

小指対立筋について急に聞かれても対立運動すること以外はなかなか出てこないと思います。

そこで今回は小指対立筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴について解説していきます。

是非これを読んで手関節・手部の治療に生かしてほしいと思います。

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小指対立筋の解剖

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画像引用(一部改変):Anatomography

小指対立筋(opponens digiti minimi )
起始 屈筋支帯・有鉤骨鉤
停止 第5中手骨尺側縁の体および頭
作用 小指対立、小指を母指側へ近づける
神経支配 尺骨神経(C8~Th1)

 

小指対立筋のストレッチ

※後日、掲載いたします。

 

小指対立筋の特徴

特徴1 小指球筋内、最深層筋

ダウンロード (41)

画像引用(一部改変):Anatomography

すでにタイトルで書かれている通り、小指対立筋は…

小指球筋内において最深層筋として知られています。

そんな小指対立筋は、小指外転筋・短小指屈筋(共に小指球筋)から覆われるようにして深部に存在しており、その多くは小指外転筋によって隠されている。

そのため触診する際には小指外転筋を避けるようにして、小指対立筋の停止部(第5中手骨尺側縁)を目掛けて背側からアプローチすると触診しやすいとされている。

もちろん小指の対立運動をさせた状態で筋肉の収縮を感じることも重要となる。

ちなみに…

・小指対立筋 ⇒ 小指球筋内、最深層筋

・短掌筋   ⇒ 小指球筋内、最浅層筋

このように知られています。

 

ここで一つ余談にはなりますが、ギヨン管症候群や手根管症候群などの手関節付近のopeを実施した後に一つの参考になるのが、手指の対立運動になります。

この手指の対立運動は母指と小指を中心として機能することで基本的な手の動き(握る・つまむ・掴むなど)の状態を確認し、どれほど機能的・実用的かを判断する材料になります。

特に母指の関与が大きい対立運動ですが、今回の小指対立筋も基本的な手の動きでは欠かせない筋肉の一つになるため覚えておくといいかと思います。

 

ひとまずここでは小指対立筋が小指球筋内の最深層筋であるということを知っておいてほしいと思います。

特徴2 尺骨神経麻痺との関係

ダウンロード (42)

画像引用(一部改変):Anatomography

ここでは小指球筋と尺骨神経を解説していきますが、分かりやすいように母指球筋と比較しながら進めていきたいと思います。

この小指球と母指球との違い…

もちろん構成する筋肉などに違いはありますが、それぞれの筋肉を支配する神経は…

・母指球 ⇒ 正中神経・尺骨神経

・小指球 ⇒ 尺骨神経のみ

ということは…

・母指球 ⇒ どちらか一方の神経が麻痺しても機能する

・小指球 ⇒ 尺骨神経麻痺になると完全麻痺を起こし、機能しない

このようになります。

 

ちなみに…

尺骨神経支配というと2種類の麻痺が存在します。

・肘部管症候群(尺骨神経高位麻痺)

・ギヨン管症候群(尺骨神経低位麻痺)

小指球筋に関しては高位・低位どちらの麻痺が生じても完全麻痺を起こします

ただこの両者の違いは2つあります。

・肘部管症候群  ⇒ 深指屈筋・尺側手根屈筋の筋力低下(

           手背尺側の感覚障害(

・ギヨン管症候群 ⇒ 深指屈筋・尺側手根屈筋の筋力低下(

           手背尺側の感覚障害(

そしてこの尺骨神経麻痺が起こると特徴的な手の症状として…

鉤爪指変形(claw finger)を起こします。

これは骨間筋と虫様筋が麻痺することと指伸筋が機能不全を起こすことで…

第4・5指のMP関節過伸展・IP関節屈曲変形を起こす変形になります。

さらに続けると鉤爪指変形と間違われやすい鉤爪手変形(claw hand)の違いとは…

・鉤爪指変形 ⇒ 尺骨神経麻痺

・鉤爪手変形 ⇒ 正中神経・尺骨神経麻痺

となっており、罹患指は…

・鉤爪指変形 ⇒ 第4・5指

・鉤爪手変形 ⇒ 第2・3・4・5指

となっているので間違えないように気をつけてください。

 

余談にはなりましたが、小指球筋は全て尺骨神経に支配されており、尺骨神経麻痺を起こすと完全麻痺に繋がることを覚えておいてほしいと思います。

特徴3 他筋肉との連結

ダウンロード (43)

画像引用(一部改変):Anatomography

さてここまでご紹介してきた小指対立筋ですが、最後は筋連結のある筋肉について解説していきたいと思います。

と言っても重要なのは、どの筋肉と何を介して繋がっているかです。

まずこの小指対立筋がいくつの筋肉と繋がっているかというと…

なんと!…5つの筋肉と繋がっているんです。

その5つの筋肉とは…

・短小指屈筋

・小指外転筋

・短母指外転筋

・短母指屈筋

・母指対立筋

こうやって見てみると…

赤字の筋肉は小指球を形成する筋肉

青字の筋肉は母指球を形成する筋肉になってます。

しかし母指球筋と小指球筋では離れていますよね?

 

ではこれらと何を介して繋がっているかというと、それは…

屈筋支帯です!!

何故、母指と小指で離れた関係にある筋肉同士が繋がっているかというとこの手根部を横走する屈筋支帯を介して繋がっているからなんです。

そのためもちろん屈筋支帯に付着するこれらの筋肉が筋スパズムや過緊張を起こすと、屈筋支帯自体が手根管部を狭くするため…

手根管症候群を発症する可能性が高まります。

(ちなみに屈筋支帯は手根管には影響してもギヨン管には影響が少ないとみられているためここでは手根管症候群に限定しています)

そのため手根管症候群をみる際は、母指球だけでなく、屈筋支帯に付着する小指球筋にも目を向けてみるといいかもしれませんよ。

 

まとめ

特徴1 小指球筋内の最深層筋である
特徴2 小指球筋は尺骨神経麻痺と関連が深い
特徴3 屈筋支帯を介して母指球筋と繋がる

 

いかがだったでしょうか。

母指球筋に対して小指球筋はあまり治療対象にならなかったり、意識されないことが多いです。

しかし深く見ていくともちろん特徴はありますし、重要な部分も見受けられます

普段見落とされがちな筋肉もこれで着目してもらえるようになっていただけたら嬉しく思います。

それでは今回も最後までご覧いただきまして本当にありがとうございました。