先生、私また元に戻れますかね?
元はというと、まさか…
そうです。この状態です。
…
…
…
…
…
…わかりました。やってみましょう!
あり得ません。
こんなことは1000人PTがいても1人いるかいないかの悩みでしょう。
こんなおふざけはさておき…
普段働いていて患者さんから…
「私、元のようになりますかね?」
「また元気なころのように旅行いけますか?」
「私、ハイキングが趣味なんです。また歩けるようになりたいんですけど…」
こんな質問や悩みをよく聞きます。
あなたはそんな質問に困っていませんか?
そんな患者さんの切なる願いに対する私たちの胸の内を探っていきたいと思います。
最後には私が行っている対処法についても解説しています。
『主治医に聞いてくれ!』と心の中で叫ぶ
「元に戻れますか?」の問いに答えるということは非常にリスクが高いです。
そのためPT側からみると、本当に厄介な質問です。
できることなら明言を避けたい…
勝手なことを言って患者さんが…
「リハビリの先生は元に戻るって言ってました!」
なんて言われたら一巻の終わり…
ドクターに呼ばれて大目玉を食らうことが予想されます。
だからそんな時は逃げの手段がよく使われます。
患者さん「先生、私また元に戻れますか?」
PT「そのことに関しては主治医に相談してみるのが一番いいかと思います」
患者さん「はぁそうですか…わかりました」
本当なら自分の力を信じて「はい!大丈夫です!」なんて言えたらカッコイイのですが、なかなかこの言葉は口に出せません。
まぁこの世に100%確実なことはないし、安易に期待させるとトラブルのもとになってしまう可能性があるからです。
じゃ何で患者さんはよくこのことを聞きたがるのでしょうか?
何故、患者さんは元に戻りたいのか?
いや自分が患者さんの立場であっても元の状態に戻りたいとは思うと思います。
それはなぜか?
おそらく…
『昔の状態と今の状態を比較しているから』
当たり前のことですけど、私はすごく大事なことだと思います。
人はすぐ何かと何かを比較する癖があります(本能なのかな…)
・昔の自分と今の自分
・自分と友達
・自分と有名人
色々なものと自分を比較して優越感に浸る、もしくは劣等感を感じる。
おおむね問題になるのがこの”劣等感”でしょう。
何か以前の状態や人と比べて今の自分自身が劣っていると感じるときは不快感が生じます。
そうするとそれを解消したくなるのが常です。
しかし自分ではどうにもならない状況の時、人へ質問することでそれを補う・解消しようとします。
「また元に戻れますか?」
これも一種の劣等感から生じる不快感を解消するための一つの手段だと思います。
だから…
・大丈夫ですよ
・安心してください
・また元のようになりますよ
そう言ってほしいんです。
そうすれば今、体にある機能障害という劣等性を補うことができると考えているんだと思います。
結局どうすればいいの?
私もこの質問をされる方としてずっと考えてきました。
そこで行き着いたのが…
”どんな青写真を描いているのか聞き出す”という方法
患者さんは昔の何も機能障害がなかった頃の自分と比較して元に戻るのか気にしています。
だから”元のように戻れれば何をしたいのか”を徹底的に聞いてあげます。
そして元に戻るという【結果】を超えて、本当にやりたい【未来】のことを引き出してあげるんです。
例えば…
「また痛みなく歩きたい」 ⇒ 何でまた歩きたいと思うんですか?
「だって歩けるようになればどこにでも行けるから」 ⇒ 何でどこにでも行けるようになりたいんですか?
「昔は主人と一緒に旅行に行くのが趣味だったからです」 ⇒ じゃまた旅行に行けるように色んな方法を考えないといけませんね。
ただ漠然と”元に戻りたい”じゃなくて、元に戻って”何をしたいか”どんな未来を想像しているのかを明確にさせる。
そうすることで必ずしも体が100%元通りにならなくても旅行に行くという目標が達成されるように一緒に試行錯誤すればいいと思っています。
「何で?」を繰り返す
やり方としては簡単です。
「何で?」を繰り返し聞けばいいんです。
そうするとその心の奥底にある患者さんが本当に望むものが見えてきます
要するに…
・体を100%治すという視点から本来の目的に焦点を当てる
いわば逃げのように感じるかもしれませんが、もちろんリハビリでできることは一生懸命します。
しかし100%元に戻すということは保証できないため、本来の目的に焦点を当てて、そしたらそれを達成するために何が必要か必死で考えます。
すると患者さんも今の状態だったら”どうすれば旅行へ行けるか?”自分自身でも考えるきっかけになると思います。
正直「元に戻りますか?」はセラピストにとって悩ましい質問です。
もちろん腕に自信があり、100%治せるというのなら単純明快に答えてあげることができるでしょう。
しかしそうでないセラピストの方が多いのは事実です。
だったらその事実を受け止めて、患者さんが本来持つ本当の願望・未来に焦点を当てて一緒に考えていく。
それくらいだったらできますよね。
今の私にはそれくらいしかできません。
だからあなたももしこの質問に困っていたら、一緒に患者さんが想像している【未来】を必死になって考えてみてください。
患者さんが自分以上に自分の未来を叶えるために必死になってくれるPTがいてくれたらそれだけでリハビリに精力的になってくれると思いますよ。
少しお節介なところがあったかもしれませんが、「元に戻りますか?」という質問に困っているあなたに参考にしていただければ幸いです。
それでは今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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