長掌筋と言えば…
全くイメージが湧かない…とか
”長”がつくから長い筋肉だったっけ?とか
実際、私もこうやって長掌筋について書くまではこんなイメージしかありませんでした。
しかし色々と調べていくうちに長掌筋についていくつかの特徴的な内容が分かってきました。
そこで今回は長掌筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴について解説していきたいと思います。
是非これを読んで長掌筋の治療に生かしてほしいと思います。
見出し
長掌筋の解剖
画像引用(一部改変):Anatomography
長掌筋(palmaris longus) | |
---|---|
起始 | 上腕骨内側上顆、前腕筋膜 |
停止 | 手掌腱膜 |
作用 | 手掌腱膜を緊張させ、手関節掌屈 肘関節屈曲 |
神経支配 | 正中神経(C7~Th1) |
トリガーポイント | 長掌筋起始部から1/3付近 |
関連痛 | トリガーポイントより遠位に手掌まで |
長掌筋のストレッチ
※後日、掲載いたします。
長掌筋の特徴
特徴1 手根管との関係
画像引用(一部改変):Anatomography
長掌筋と言えば、まずこれが必須の知識だと思います。
それが手根管との関係です。
簡潔に説明すると…
長掌筋は手根管を作る屈筋支帯の上を通過しているということです。
そのため長掌筋の緊張具合によっては上から圧力をかける形になり、圧迫してしまうからです。
要するに長掌筋は手根管内の内圧に重要な働きを及ぼす筋肉だと言えます。
手根管と言えば、もちろん”手根管症候群”を思い出すと思います。
手根管症候群とは…
何らかの原因で手根管内の正中神経を圧迫することにより痛みや痺れが起こる神経障害のことを言います。
その原因は様々で今後また詳しく解説していきます。
では話を戻しますが、長掌筋が圧迫しうる手根管にはどのような組織が通過しているかということです。
もちろん正中神経が通過するのですが、全て挙げていきたいと思います。
・正中神経
・浅指屈筋
・深指屈筋
・長母指屈筋
・橈側手根屈筋
これらの組織が通過しています。
もちろん長掌筋だけが問題ではありません。
手根管内の問題、また外的要因もありますし、長掌筋以外にも尺側手根屈筋も屈筋支帯の上を通過していると言われています。
是非このような解剖学を頭に入れておくとアプローチの内容も変わってくるのではないかと思います。
特徴2 内側上顆炎との関係
画像引用(一部改変):Anatomography
内側上顆炎と関係のある筋肉を今まで4つほどお伝えしてきましたが、今回の長掌筋が最後になります。
度々同じような内容をお伝えしてきて申し訳ありません。
しかしこれも各筋肉の特徴にあたるため今回まで解説させていただきます。
内側上顆炎とは…
上腕骨内側上顆に付着する筋肉(肘関節屈筋群)の過度な使用やオーバーワークなどによって引き起こされる肘関節内側の痛みや炎症の事を言います。
これを一般的には”ゴルフ肘”だと言われています。
この内側上顆炎を引き起こす可能性のある5つの筋肉をご紹介します。
・長掌筋
・円回内筋
・浅指屈筋
・尺側手根屈筋
・橈側手根屈筋
この5つの筋肉が内側上顆炎を引き起こす可能性がある筋肉だと言われています。
さて、よく内側上顆炎と対比して覚えられることが多い”外側上顆炎”ですが、この両上顆炎には決定的な違いが2つ存在します。
それは…
①筋肉の種類の違い
②靭帯との繋がりの有無
それでは①筋肉の種類の違いから解説していきます。
両上顆炎は基本的に筋肉が筋スパズムや引っ張り張力が発生することにより炎症が起こります。
そんな痛み・炎症の元になる筋肉に大きな違いがあるんです。
・内側上顆炎 ⇒ 肘関節屈筋群
・外側上顆炎 ⇒ 肘関節伸筋群
どちらの筋肉を酷使しているか知るだけでどちらの上顆炎を引き起こすか容易に判断がつくと思います。
そして最近では…
肘関節 < 手関節
肘関節への関与が大きい筋肉より手関節への関与が大きい筋肉の方が上顆炎を引き起こす可能性が大きいと言われています。
(モーメントアームの長さなどが原因だと言われています)
・内側上顆炎 ⇒ 手関節掌屈筋
・外側上顆炎 ⇒ 手関節背屈筋
患部だけでなく、このような知識を持っているだけで見方に広がりが持てると思います。
次に②靭帯との繋がりの有無についてです。
これに関しては簡潔的な内容です。
・内側上顆に付く筋肉 ⇒ 靭帯との繋がり(-)
・外側上顆に付く筋肉 ⇒ 靭帯との繋がり(+)
靭帯との繋がりが有るということは筋肉の緊張もしくは炎症が靭帯にまで蔓延する可能性がとても高いということ。そうなると…
・内側上顆炎 ⇒ 外側上顆炎に比べて治りやすい
・外側上顆炎 ⇒ 内側上顆炎に比べて治りにくい
ということが言えます。
これが各筋肉における”最後の内側上顆炎”についての解説になるのでしっかりと覚えておいてほしいと思います。
特徴3 他筋肉との連結
画像引用(一部改変):Anatomography
長掌筋は数えうるだけでもおよそ6つの筋肉との筋連結があることが分かっています。
早速、その6つの筋肉をご紹介すると…
・短掌筋
・浅指屈筋
・円回内筋
・上腕二頭筋
・尺側手根屈筋
・橈側手根屈筋
これら6つの筋肉と繋がりがあるとされています。
そして上記の6筋とどこで繋がりがあるかと言うと…
停止部近くの腱膜であると言われています。
先ほど【特徴1】でもお話ししたように…
長掌筋は手根管を作る屈筋支帯の上を通る。
ということですからその前後の腱膜で他筋肉と連結していることが考えられます。
どちらにしろこれら6つの筋肉と連結があることにより互いに影響を受け合うことは必須です。
長掌筋が他6筋に影響を及ぼすこともあれば、他6筋が長掌筋に影響を及ぼすこともあるということです。
是非参考までに覚えておいてほしいと思います。
まとめ
特徴1 手根管を作る屈筋支帯の上を通過する
特徴2 内側上顆炎を引き起こす一因である
特徴3 長掌筋は6つの筋肉と連結している
いかがだったでしょうか。
長掌筋と言っても何も思い浮かばなかった人にとっては目から鱗の知識もあったのではないかと思います。
しかし知っているだけでは勿体ないので是非臨床で生かしてください。
今回も最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。
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