母指対立筋と言えば…
その名の通り、母指の対立運動にかかわる筋肉でしょ?とか
母指側に付くから母指球の一部かな?とか
母指対立筋にことを聞かれてもこのような内容以外に語れる人はまず少数派です。
皆さん、母指対立筋についての知識はそこまで深くありません。
そこで今回は母指対立筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴について解説していきます。
是非これを読んで手関節・母指対立筋の治療に生かしてほしいと思います。
見出し
母指対立筋の解剖
画像引用(一部改変):Anatomography
母指対立筋(opponens pollicis) | |
---|---|
起始 | 屈筋支帯、大菱形骨 |
停止 | 第1中手骨体および頭 |
作用 | 母指対立、屈曲 |
神経支配 | 尺骨神経(C8~Th1) |
トリガーポイント | 手関節付近の筋腹 |
関連痛 | 母指掌側面、手関節橈側掌面付近 |
母指対立筋のストレッチ
※後日、掲載いたします。
母指対立筋の特徴
特徴1 母指球筋内の最外側筋
画像引用(一部改変):Anatomography
タイトルですでに書かれているように、母指対立筋は…
母指球筋内の最外側筋として位置づけられています。
解剖図を見てみると短母指外転筋と重なるようにして存在していますが、厳密には停止部がより外側方向にあるため、母指対立筋が最外側筋であると言われています。
ということは触診する際も原則的に言えば…
・母指を対立運動させながら、停止部付近の母指球最外側を触診
このようにすることで母指対立筋を触れることができます。
ちなみに…
・母指対立筋 ⇒ 母指球筋内、最外側筋
・短母指屈筋 ⇒ 母指球筋内、最内側筋
ひとつの目安になると思うので一緒に覚えておいてください。
ここまで母指対立筋を中心にして解説してきました母指球筋ですが、臨床では萎縮が見られる患者さんもいらっしゃいます。
そんな母指球の萎縮は、正中神経麻痺によるものが大方を占めています。
特に手関節の動きには支障ないものの母指球の萎縮だけ起きるケースは…
正中神経の低位、遠位部での損傷または絞扼によって麻痺が起きているのが特徴的です。
また正中神経低位麻痺で起こる手の特徴として…
猿手(ape hand)があります。
これは母指と手掌面が平面化してしてしまい、その名のごとく”猿の手”と類似することによります。
またこの正中神経低位麻痺になり、猿手変形を起こすと母指と示指で正円形を作ることも難しくなります。
この現象を”perfect O不能”の状態と言われ、よく正中神経低位麻痺の整形外科的テストとしても用いられます。
余談にはなりますが、手根管症候群や手関節opeを行った後はこの母指対立筋機能を中心とした母指対立運動の再獲得が重要視されます。
それは基本的な手の機能、掴む・握る・つまむなどの母指を中心とした機能が戻らないと手関節全体として機能していると言えないからです。
是非、この手関節対立の動きとまずは母指対立筋が母指球筋内の最外側筋であるということを覚えておいてください。
特徴2 屈筋支帯との関係
画像引用(一部改変):Anatomography
母指対立筋は屈筋支帯に起始を持ちます。
ということは…
母指対立筋の状態で屈筋支帯に影響を及ぼす可能性があるということになります。
勘の良い方はもうすでにお分かりかもしれませんが…
屈筋支帯への悪影響 ⇒ 手根管症候群
このような繋がり・発展が考えられます。
手根管症候群にも様々な原因が考えられています。
・橈骨遠位端骨折後の変性治癒による後遺症
・腱鞘炎からの炎症蔓延によるもの
・何らかの影響で屈筋支帯内の内圧が上昇したもの
・関節リウマチなどの全身性疾患によるもの
これらを中心に様々な原因がありますが、今回の場合は、筋肉からの影響で屈筋支帯内の内圧上昇による症状出現が最も可能性が高いと思われます。
簡単に手根管症候群の症状をおさらいしておくと…
・母指球筋の萎縮(猿手)
・手の痺れ(母指から環指橈側半分まで)
⇒ 特に夜間~早朝にかけて(内圧の関係のため)
この2点はしっかりと押さえておいてください。
そのためここまで総括すると…
・母指対立筋の状態により、付着している屈筋支帯に緊張状態を与えると手根管症候群へ発展する可能性がある
・手根管症候群には様々な原因が考えれるが筋肉の状態が内圧へと反映される結果となる
この2つをしっかりと押さえておくことが重要になってくると思います。
特徴3 他筋肉との連結
画像引用(一部改変):Anatomography
これは先ほどの母指対立筋が屈筋支帯との繋がりがあることを解説してきましたが、今回の母指対立筋が他の筋肉と連結がある内容とも被る部分が少々あります。
簡潔に言うと…
母指対立筋は、5つの筋肉と連結しています。
その5つの筋肉とは…
・短母指屈筋
・短母指外転筋
・短小指屈筋
・小指対立筋
・小指外転筋
これら5つの筋肉になります。
上記の2つに関しては共に母指球を形成する筋肉。
そしてその他3つの筋肉は小指側の筋肉になっていますが、これは屈筋支帯を介して繋がっていると言われています。
要するに【特徴2】の被っている部分はココです!
屈筋支帯を介して母指側の筋肉と小指側の筋肉を結んでいます。
そしてお互い筋スパズムや緊張状態が続くと屈筋支帯を圧迫し、手根管症候群を是正する形になりえます。
このように筋肉同士の繋がりにより、手根管症候群などの疾患にも影響することを知っておいてほしいと思います。
まとめ
特徴1 母指球筋内で最外側に位置する筋肉である
特徴2 起始である屈筋支帯の内圧に影響する
特徴3 屈筋支帯を介して小指側の筋肉と繋がる
いかがだったでしょうか。
母指対立筋と聞かれても対立運動する以外の特徴を聞かれてもなかなか思い浮かびませんが、このような内容をみるとスッと入ってくる部分もあるのではないでしょうか。
是非、臨床でもこの知識が生かされることを願っています。
今回も最後までご覧いただきまして本当にありがとうございました。
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