深指屈筋と言えば…

浅指屈筋みたいに指を曲げる筋肉でしょ?とか

深指屈筋だから浅指屈筋より深い所にあるかな?とか

深指屈筋のイメージと言えば、大体は浅指屈筋と比べられたり、一緒に引き合いに出されることが多いです。

確かに浅指屈筋との繋がりが深い深指屈筋ですが、もっと突っ込んだことまで理解されてますか?

恐らく、ハンドセラピィをされている方以外はなかなか理解されていないことが多いと思います。

そこで今回は深指屈筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴について解説していきたいと思います。

是非これを読んで手部のリハビリ、深指屈筋の治療に生かしていただきたいです。

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深指屈筋の解剖

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画像引用(一部改変):Anatomography

深指屈筋( flexor digitorum profundus)
起始 尺骨近位前面2/3、前腕骨間膜
停止 第2~5指末節骨底
作用 第2~5指DIP関節屈曲
神経支配 正中神経(C7~Th1)、一部尺骨神経(C7~Th1)
トリガーポイント ①前腕中央の橈側にある筋腹付近
②前腕中央の尺側にある筋腹付近
関連痛 ①第3指の掌側面
②第4、5指の掌側面

 

深指屈筋のストレッチ

※後日、掲載いたします。

 

深指屈筋の特徴

特徴1 浅指屈筋との違い・関係

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画像引用(一部改変):Anatomography

深指屈筋と言えば、この【特徴1】だけでも押さえておけばいいのではないかというくらい重要な内容です。

ここでは浅指屈筋との違い・関係として浅指屈筋と比較しながらわかりやすく解説していきたいと思います。

まずその浅指屈筋との大きな違いは…停止部と作用の違いです。

停止部に関しては…

・深指屈筋 ⇒ 第2~5指末節骨底

・浅指屈筋 ⇒ 第2~5指中節骨

作用に関しては…

・深指屈筋 ⇒ 第2~5指DIP関節屈曲

・浅指屈筋 ⇒ 第2~5指PIP関節屈曲

ここまでは皆さんご存知のように似た名前であっても停止部・作用が異なります。

そんな深指屈筋腱は末節骨底に停止する前に浅指屈筋腱を貫通してPIP関節を通過し、DIP関節へと付着するとも言われています。

 

そして重要なのがここからです。

浅指屈筋に出来て、深指屈筋には出来ないこと

それは…指の分離運動です。

浅指屈筋は2~5指でそれぞれ1本ずつ分離して指を動かすことが可能ですが、深指屈筋は2指以外、分離して単独では動かすことができません

試しに2、3、5指を他方の手で伸展位に固定し、4指だけ自動屈曲してみてください。

おそらくPIP関節の屈曲は出来てもDIP関節の屈曲は出来ないと思います。

何故か?

それは…深指屈筋の3~5指腱は単独ではなく、ひとつながりになっているからです。

もちろんそれぞれの指へと向かい、停止するため分かれて走るのですが、前腕部でこの3~5指腱性線維はとても繋がりが強いようです。

深指屈筋では起始部が複数ありますが、浅指屈筋のように頭がしっかりと分かれているわけではありませんが…

・2指    ⇒ 前腕骨間膜

・3~5指 ⇒ 尺側近位前面2/3

このように分かれている可能性が大きいため…

2指は分離運動可だが3~5指は分離運動不可と言われています。

浅指屈筋は各指分離運動は可能でも、深指屈筋は2指以外は分離運動が不可能だということを覚えておいてください。

屈筋腱損傷後のリハビリではこの知識が生かされる可能性も大きいと思います。

また余談ですが、屈筋腱損傷にはいくつかの分類があり、zoneⅡと呼ばれる…

DIP・PIP関節間~MP関節までの部位での損傷は深指屈筋腱・浅指屈筋腱の両腱が損傷してしまい、あまり予後が良くないようです。

もちろん手術に関してもこの部位は”no man’s land”と言われ、熟練者でないと屈筋腱縫合は難しいと言われている場所でもあります。

何となくの知識として覚えておいてください。

特徴2 屈筋と伸筋の違い

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画像引用(一部改変):Anatomography

これは前回の【浅指屈筋】のページでも紹介させていただきました。

前腕を屈筋と伸筋で分けてみると…

筋肉の数は大差ありませんが、その大きさには歴然とする違いがあります。

その前腕中央部を横断面で確認すると…

屈筋は伸筋に対しておよそ2倍の大きさがあるようです。

そしてその中でも特に大きな面積を占めているのが、深指屈筋と浅指屈筋になります。

ちなみにこの2つの筋肉が合わさるだけで前腕中央部での横断面では50%を超える面積があるとされています。

そのくらいこの2つの筋肉は重要な役割を担っているのだと思います。

またこの前腕部でのトラブル・障害と言えば…

コンパートメント症候群によるVolkmann(フォルクマン)拘縮が代表的です。

骨折や外傷などにより筋肉が密集している前腕部で内出血などにより内圧が高まり、筋肉の機能不全や血行不良を招き、手指が屈曲した状態で拘縮し、指の伸展ができなくなることを言います。

特にこのVolkmann拘縮前腕前面(屈筋群)での区画でコンパートメントを起こしやすく、屈筋が圧迫され、腱が短縮方向へと引っ張られることから指が屈曲し、拘縮を起こして伸展ができなくなりやすいと言われています。

是非、深指屈筋・浅指屈筋両方の特徴として覚えておいてください。

特徴3 他筋肉との連結

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画像引用(一部改変):Anatomography

今までも何度か他の筋肉との連結として各ページでご紹介してきましたが、今回の深指屈筋は他の筋肉と比べ、他の筋肉との連結が一際多い筋肉でもあります。

その数なんと…8つ!!!

挙げていきましょう。

・虫様筋

・回外筋

・上腕二頭筋

・長母指屈筋

・長母指伸筋

・短母指伸筋

・長母指外転筋

・尺側手根屈筋

こんなに多くの筋肉と連結しているようです。

もちろん全てが筋膜で繋がっているような状態ではないようですが、一つの特徴として骨間膜を介して連結を保っている筋肉もあるようです。

筋肉の張力を保ったり、前腕回内外の際にも重要な働きをする骨間膜

是非、念頭に置いていただきたいと思います。

またこれだけの多くの筋肉と連結がある深指屈筋は裏を返せば、多くの筋肉からの影響を受けやすいとも言えるため、十分注意して観察していただきたいと思います。

 

まとめ

特徴1 深指屈筋3~5指は分離した運動が出来ない!
特徴2 深指屈筋と浅指屈筋は前腕部で広範囲を占めている
特徴3 深指屈筋は8つの筋肉と連結している

 

いかがだったでしょうか。

普段、浅指屈筋と並んで覚えられやすい深指屈筋ですが、あまり細かいことまでは覚えていないようにも感じます。

しかし深指屈筋は個別の分離運動が難しかったり、多くの筋肉と連結していたりと様々な特徴を兼ね備えていることがわかります。

上肢疾患をみられる方もそうでない方も是非、参考にして臨床で生かしていただければ幸いです。

今回も最後までお付き合いいただきまして本当にありがとうございました。