総指伸筋と言えば…

母指以外の指を伸ばす筋肉!とか

ん~それ以外の特徴はない!とか

総指伸筋なので確かに指を伸展させる筋肉で間違いないのですが、それ以外のイメージを問われてもなかなか出てきませんよね。

でもそんな総指伸筋でも臨床上、役に立つような特徴がいくつか存在します

そこで今回は総指伸筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴について解説していきたいと思います。

是非これを読んで肘関節から手関節・手指の治療、また総指伸筋の個別の治療に生かしていただきたいです。

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総指伸筋の解剖

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画像引用(一部改変):Anatomography

総指伸筋(extensor digitorum)
起始 上腕骨外側上顆・前腕筋膜(短橈側手根伸筋と共通部位)
停止 第2~5指背側の末節骨・中節骨
作用 第2~5指、手関節伸展
神経支配 橈骨神経(C6~8)
トリガーポイント ①橈骨頭から3~4㎝遠位背側
②は①より遠位で筋腹深層
関連痛 ①前腕背側中央を縦に走り、第3指背側まで
②外側上顆より前腕背側中央を縦に走り、第4指背側まで

 

総指伸筋のストレッチ

※後日、掲載いたします。

 

総指伸筋の特徴

特徴1 外側上顆炎との関係

ダウンロード (41)

画像引用(一部改変):Anatomography

肘関節の外側に痛みを訴える代表的な疾患として挙げられるのがこの外側上顆炎です。

総指伸筋も上腕骨外側上顆を起始の一部としているため自ずと関係してきます。

まず外側上顆について簡単に説明すると…

上腕骨外側上顆に付着する肘関節伸筋の過度な使用・オーバーワークなどにより外側上顆に痛みや炎症を引き起こす疾患の事をいいます。

この外側上顆炎は一般的に”テニス肘”という言葉で世に知られています。

ちなみにこの外側上顆炎を引き起こす原因になるであろう筋肉は、実に…

8つ以上!!だと言われています。

その総指伸筋を含む8つの筋肉とは…

・総指伸筋

・肘筋

・回外筋

・小指伸筋

・腕橈骨筋

・尺側手根伸筋

・短橈側手根伸筋

・長橈側手根伸筋

この8つの筋肉が外側上顆炎を引き起こす可能性のある肘関節伸筋にあたります。

また反対側の肘関節内側に疼痛・炎症を起こす”内側上顆炎”。

よく比較されやすいのですが、明確な違いが2つ存在します。

それは…

①付着している筋肉の違い

②靭帯との関係の有無です。

簡単に説明すると…

①付着している筋肉については…

・外側上顆炎 ⇒ 肘関節伸筋

・内側上顆炎 ⇒ 肘関節屈筋

そのためどちらの筋肉をより酷使するかによってどちら側に疼痛が発生しやすいか決まってきます。

②靭帯との関係の有無については…

・外側上顆に付く筋 ⇒ 靭帯との関係(+)

・内側上顆に付く筋 ⇒ 靭帯との関係(-)

このように外側上顆炎になるとその影響は靭帯にまで及ぶため内側上顆炎に比べると痛みの寛解が遅いと言われています。

これは次の特徴2で詳細を解説していきます。

特徴2 靭帯との関係

ダウンロード (42)

画像引用(一部改変):Anatomography

肘関節に関係する靭帯と言えば…

・内側側副靭帯

・外側側副靭帯

・橈骨輪状靭帯

この3つが挙げられると思います。

そのうち総指伸筋と関係があるのが…

・外側側副靭帯

・橈骨輪状靭帯

になります。

また先ほど【特徴1】でも外側上顆に付着する筋肉を紹介しましたが、その中でも外側側副靭帯と繋がりのある筋肉は…

・総指伸筋

・肘筋

・回外筋

・短橈側手根伸筋

以上の4つの筋肉だと言われています。

当たり前の話かもしれませんが、これら4つの筋肉と外側側副靭帯は相互に関わりあっており、一方へ治療を施せば他方にも効果が波及すると言えます。

しかしその反面、どちらか一方に損傷が見られればその繋がりによって他方も炎症などが蔓延する可能性も兼ね備えています。

 

また橈骨輪状靭帯は橈骨頭を包むように尺骨頭から付いている靭帯である。

この橈骨輪状靭帯は関節包と結合しており、とても強固な靭帯でもある。

主に橈骨輪状靭帯は橈骨頭を安定した位置に保ち、尺骨にある橈骨切痕部での回旋(前腕の回内・回外)を誘導するような形になる。

少し余談にはなりますが、肘関節にはもう一つ靭帯様の組織が存在します。

それが”斜索”です。

斜索とは尺骨近位部から斜め下外側に走り、橈骨へと付着します。

この斜索は骨間膜が存在しない前腕近位部の補強線維として考えられており、前腕回外時の制限因子になることも知られています。

余談ですが、前腕回外制限のある患者さんの治療に役立つ知識だと思います。

特徴3 総指伸筋腱の構造

ダウンロード (43)

画像引用(一部改変):Anatomography

上記の【総指伸筋の解剖】においては覚えやすいように停止部を…

”第2~5指背側の末節骨・中節骨”と記載しています。

しかし厳密に言うと停止腱は…

中央索側索という2つの組織に分かれて付着しています。

簡単に言えば、停止部が2つ存在するような感じです。

・中央索 ⇒ 中節骨

・側索  ⇒ 末節骨

このようにそれぞれ付着します。

特に”側索”に関しては骨間筋から出てくる側索とも繋がりがあるため、指背筋膜も交えながら末節骨へと停止するようです。

当たり前のことながら総指伸筋腱だけに着目するのではなく、そこから出てくる中央索・側索の事を理解し、側索との繋がりのある骨間筋側索と指背腱膜との連結があることを念頭に置いていてほしいと思います。

 

まとめ

特徴1 総指伸筋は外側上顆炎を引き起こす一因
特徴2 外側側副靭帯・橈骨輪状靭帯と関わりが深い
特徴3 総指伸筋腱は特徴的な腱構造をしている

 

いかがだったでしょうか。

普段、指を伸展させる機能しか思い浮かばない総指伸筋ですが、これを読むことで少しは治療に役立ちそうな知識を得られましたでしょうか。

是非、臨床の場で生かしていただきたいと思います。

今回も最後までご覧いただき本当にありがとうございました。