上腕筋と言えば…
上腕二頭筋ほど重要じゃない肘の屈筋?とか
肘の屈筋だから肘伸展の制限因子?とか
確かに上腕の筋肉と言ったら上腕二頭筋が一番有名なため上腕筋というマイナーな筋肉はさほど注目されてはいません。
もちろん臨床的に見ても上腕二頭筋は重要ですし、かと言って上腕筋が全く重要でないわけではありません。
そこで今回は上腕筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴について解説していきたいと思います。
是非これを読んで上腕筋の治療に生かしてほしいと思います。
見出し
上腕筋の解剖
画像引用(一部改変):Anatomography
上腕筋(brachialis) | |
---|---|
起始 | 上腕骨前面遠位1/3 |
停止 | 尺骨鉤状突起、尺骨粗面、肘関節包 |
作用 | 肘関節屈曲 |
神経支配 | 筋皮神経(一部橈骨神経)(C5,6) |
トリガーポイント | 肘関節内側上方、筋腹上半分付近 |
関連痛 | 肘内側、上腕腹側、手背と第1指中手骨付近 |
上腕筋のストレッチ
※後日、掲載いたします。
上腕筋の特徴
特徴1 関節包との関係
画像引用(一部改変):Anatomography
上腕筋は肘関節の屈筋としては皆さんご存知の筋肉だと思いますがこの上腕筋、実は…
肘関節関節包との繋がりがあるとされています。
では実際に肘関節関節包と繋がりがあるとはどういう意味なのか考えながら解説していきたいと思います。
まずそもそも関節包とは…というところから簡単に解説していきます。
関節包とは…関節を衝撃などから保護し、関節を滑らかに動かすために滑液などの調節を行い、固有感覚受容器としての働きもあります。
そんな関節包ですが、一たび炎症などが起これば関節が腫れ、熱感などを帯びる。
少し話は逸れましたが、上腕筋は肘関節関節包との繋がりがあり、これら上記の機能を補助しているわけです。
また肘関節を屈曲する際は関節包を緊張させ、引き出す役割もあるとされています。
肘関節を屈曲した際、つまり感を感じたことありませんか?
あれはひょっとすると上腕筋の関節包を引き出す機能が低下することで関節包を挟み込み、つまり感を感じているかもしれません。
必ずしも『肘関節のつまり感 = 上腕筋の関節包引き出し機能低下』と決めつけるわけではありませんが、参考まで覚えておいてほしいと思います。
また肘関節関節包内の炎症は上腕筋への蔓延も十分に考えられることも念頭に置いていてほしいです。
特徴2 神経との関係
画像引用(一部改変):Anatomography
上腕筋を支配している神経は上記の通り…筋皮神経です。
筋皮神経は…腕神経叢の外側神経束から発生し、上腕筋のところへ至る際には、上腕筋と上腕二頭筋間を通過する。
そのためまず肘関節の痛みに対して治療を行う際には下位頚椎から上位胸椎にも目を向ける必要があるということ。
そして筋皮神経は上腕筋と上腕二頭筋間を通過する前にも烏口腕筋を貫通して通過することが多いため、烏口腕筋にも着目する必要がある。
また上腕筋・上腕二頭筋間を過ぎると外側前腕皮神経として前腕部に神経の枝を送ることになるが、その際、外側上腕筋間中隔辺りを通過することを知っておいた方がいいかもしれません。
上記の【上腕筋の解剖】では起始に上腕骨前面遠位1/3としか記していませんが、一部”内・外側上腕筋間中隔”と記載されているものもあるようなので補足として覚えておくとよいかと思います。
特徴3 肘関節屈筋としての役割
画像引用(一部改変):Anatomography
上腕筋が純粋な肘関節屈筋だということは皆さん、承知の事実だと思います。
そんな上腕筋にも肘関節屈曲に対する特徴があります。
それは、体積と生理的横断面積についてです。
なんとなく難しい字で書いていますが簡単に説明していきたいと思います。
【体積と生理的横断面積】
これは他の肘関節屈筋として知られている上腕二頭筋との比較をした際に使われるものです。
簡単に言うと…
・体積が大きい ⇒ 上腕二頭筋
・生理的横断面積が大きい ⇒ 上腕筋
これはどういうことかというと筋肉実質は上腕二頭筋の方が大きいが、その筋肉をスパッと輪切りにした生理的横断面積は上腕筋の方が大きいということ。
これによって何が分かるかというと…
上腕筋の方が肘関節屈曲に関しては強い!ということ。
筋力は生理的横断面積と比例すると言われています。
そのため体積は上腕二頭筋より小さくても筋肉の生理的横断面積が大きい上腕筋は上腕二頭筋より強い!ということになるんです。
また上腕筋は上腕二頭筋以外の肘関節屈筋も含めて最大の肘関節屈筋としても知られています。
そのため高負荷の物を持ち上げる際にも十分に力を発揮する必要があるためしっかりと柔軟性を保っておく必要があります。
もし筋スパズムなどによって機能障害がある場合には格段に肘関節屈筋としての機能が落ちてしまうことを知っておくべきだと思います。
まとめ
特徴1 上腕筋は肘関節関節包と繋がりがある
特徴2 筋皮神経は上腕筋・上腕二頭筋間を走る
特徴3 上腕筋は最強の肘関節屈筋である
いかがだったでしょうか。
隣接する上腕二頭筋や拮抗筋である上腕三頭筋などと比べるとなかなか特徴のない上腕筋ですが、少しは参考になる内容がありましたでしょうか。
上腕筋のような上腕二頭筋に隠れた筋肉より表層にある筋肉の方が確かに治療の際にもアプローチしやすいですが、深層に隠れた筋ほど関節と繋がりのある筋肉もありません。
是非、今回の内容もあなたの臨床に生かしていただければと思います。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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