上腕二頭筋と言えば…

上腕二頭筋長頭腱炎など肩の痛みと関係する筋肉?とか

肩関節の2関節筋!とか

上腕二頭筋のイメージと言えば、まだまだ多くのことが挙がってくると思いますが、専門職でなくとも二の腕に付いている筋肉だとわかるくらいメジャーな筋肉として扱われています。

そんな上腕二頭筋ですが、治療に関してはどのように扱えばいいのでしょう。

そこで今回は上腕二頭筋の基礎的な解剖学の復習からストレッチ方法、そして臨床で役立つ3つの特徴について解説していきたいと思います。

是非これを読んで上腕二頭筋の治療に生かしてほしいと思います。

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上腕二頭筋の解剖

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画像引用(一部改変):Anatomography

上腕二頭筋(biceps brachii)
起始 長頭:肩甲骨関節上結節
短頭:肩甲骨烏口突起
停止 長頭:橈骨粗面
短頭:橈骨粗面、上腕二頭筋腱膜(前腕筋膜に移行)
作用 肘関節屈曲、回外
長頭単独では肘関節外転、短頭単独では肘関節内転
神経支配 筋皮神経(C5、6)
トリガーポイント 上腕二頭筋遠位1/3
関連痛 三角筋前部線維付近から上腕前面、肘内側、肩甲骨上部にも出現

 

上腕二頭筋のストレッチ

※後日、掲載いたします。

 

上腕二頭筋の特徴

特徴1 上腕二頭筋長頭の役割

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画像引用(一部改変):Anatomography

上腕二頭筋長頭の役割としてのポイントは大きく2つあります。それは…

①上腕骨頭を上方からコントロールしていること

②上腕二頭筋長頭単独では肩関節外転に働くこと

この2つになります。それでは1つずつ説明していきたいと思います。

 

まず①上腕骨頭を上方からコントロールしているということについて解説します。

肩甲骨の関節上結節から始まった上腕二頭筋長頭は棘上筋と肩甲下筋の間を走行し、上腕骨頭の上方を通過する際に結節間溝を通りながら90~110°と言われるカーブを曲がり、尾側方向へと下降し、進んでいきます。

この際にもいくつかポイントがありますが、まずは棘上筋と肩甲下筋の間を走行しているということ。

ここは腱板疎部と言い、肩関節の中でも脆弱な部位としてよく知られています。

上腕二頭筋長頭がここを走行するということは、上腕二頭筋長頭がこの腱板疎部を補強する役割を担っているとも言われています。

しかしその反面、上腕二頭筋長頭がひとたび炎症などを起こすとその影響を受ける可能性もあることを理解しておいてください。

次に結節間溝を通過する際の解説ですが、ここは次の【特徴2】で詳しく解説していきます。

そしてここで一番重要なのが、上腕二頭筋長頭が上腕骨頭を上方からコントロールしているということです。

インピンジメント症候群を代表とする肩関節の疾患の一つに上腕骨頭と肩峰との衝突があります。

それを回避するために第2肩関節に広大な肩峰下滑液包があります。

これに加えて上腕二頭筋長頭が上腕骨頭の上方偏移をコントロールしていると言われています。

上腕二頭筋長頭は上腕骨頭を唯一上方から押さえつけ、下方へ引き下げる働きがあります。

そのため上腕二頭筋長頭がしっかり機能していれば、第2肩関節のところでの衝突を防ぐことができます。

これが上腕二頭筋長頭の大きな役割の一つであるということができます。

 

次に②上腕二頭筋長頭単独では肩関節外転に働くことについて解説します。

これは単純に上腕二頭筋長頭と上腕骨頭の軸との関係から見れば明らかです。

前額面から観察すれば、上腕二頭筋長頭が上腕骨頭軸よりも外側に存在します。

これにより上腕二頭筋長頭が収縮すれば肩関節外転運動を行います。

これが肩関節外旋位であれば、なおさらその役割は強くなります。

 

上腕骨頭の上方偏移を抑制しながら外転運動を主導する上腕二頭筋長頭

これだけでもかなり重要な筋肉であることが理解していただけるのではないかと思います。

特徴2 結節間溝での特徴

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画像引用(一部改変):Anatomography

上腕二頭筋長頭が結節間溝を通過するというのは専門職の方なら誰でも知っているような知識です。

ではその上腕二頭筋長頭が結節間溝を通過する際の4つのポイントをみていきましょう。

①上腕二頭筋長頭腱は結節間溝部で滑液鞘に包まれている

(関節包内を通過する筋としては上腕二頭筋長頭しかないのではないかと思います。)

②上腕骨頭上方から下方へカーブする際の滑車の役割を担っている

③結節間溝上を上腕横靭帯が覆っている

④その上をさらに筋肉が覆っている

およそこの4つが上腕二頭筋長頭と結節間溝を語る上では外せないと思いますのでしっかりと覚えておいてほしいと思います。

さてここで④結節間溝を覆っている筋肉について詳細を解説していきたいと思います。

結論から言えば…

表層     ⇒ 大胸筋

深層(頭部) ⇒ 棘上筋

深層(内側) ⇒ 肩甲下筋

これら3つの筋肉によって覆われています。

結節間溝と上腕横靭帯との関係を調べていけば大胸筋が関係することはよく言われていますが、その深層には棘上筋肩甲下筋も関与しているとも言われています。

これらの筋肉の張力によって上腕二頭筋長頭腱が摩擦を最小限に抑えながら動くことができると考えれています。

そのため上腕二頭筋長頭由来の痛みや機能不全には大胸筋・棘上筋・肩甲下筋も関与していることを念頭に置いてほしいと思います。

特徴3 上腕二頭筋短頭の役割

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画像引用(一部改変):Anatomography

上腕二頭筋短頭…長頭と比べれば、あまり特徴がなく、治療対象にもあまりならないようですが重要な筋肉の一つになります。

それは上腕二頭筋短頭に肩関節内転作用があるからです。

・上腕二頭筋長頭 ⇒ 外転作用

・上腕二頭筋短頭 ⇒ 内転作用

全く相反する動きをする筋肉同士が上腕二頭筋を形成しています。

これは先ほどの上腕二頭筋長頭の外転作用と考え方は一緒です。

要するに…上腕骨頭の軸と筋の走行を見ればよいからです。

前額面から見て、上腕二頭筋短頭は上腕骨頭軸より内側にあります。

そのため肩関節内転に作用するのは容易に理解できると思います。

 

また上腕二頭筋短頭が付着する”烏口突起”

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画像引用(一部改変):Anatomography

ここには上腕二頭筋短頭以外にも…小胸筋烏口腕筋が付着しています。

これらは互いに影響し合う可能性があるとされているため、是非覚えておいてチャックしていただきたいと思います。

 

まとめ

特徴1 長頭は骨頭上昇抑制と外転作用あり
特徴2 結節間溝も上腕二頭筋長頭を知る上で重要
特徴3 短頭は内転作用と烏口突起との関係あり

 

いかがだったでしょうか。

皆さんご存知の【上腕二頭筋】でしたが、ちょっと細かく見ていきました。

上腕二頭筋長頭腱炎などの診断名は知っていてもなかなか治療する時のポイントが分からず、直接アプローチする機会がない方も多いかもしれません。

是非、この知識があなたの臨床で生かされれば嬉しく思います。

今回も最後までご覧いただきまして本当にありがとうございました。