臨床において膝関節の伸展制限と言えば…

もちろん膝関節後面に付着する筋肉でその中心を走る膝窩筋を思い出す人は多いかと思います。

養成校時代の教科書を見返してみれば…

膝窩筋の作用は『膝関節屈曲、内旋』

もちろん解剖学的にも異論はないと思われますが、最近ではその作用の考え方が変わってきているのをご存知でしょうか。

今回はそんな膝窩筋の膝関節伸展制限に対する考え方について解説していきたいと思います。

これを読み終わったころには膝窩筋に対する新しい考え方を持つことができ、臨床においても治療の幅を広げられること間違いないです!

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膝窩筋の解剖

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画像引用(一部改変):Anatomography

膝窩筋(popliteus)
起始 大腿骨外側顆、外側側副靭帯、膝関節包
停止 脛骨後面でヒラメ筋線より上方
作用 膝関節屈曲・内旋
神経支配 脛骨神経(L4~S1)
トリガーポイント 脛骨への付着部付近
関連痛 膝窩部に放散

 

このような解剖がよく教科書には載っていますが、これが…

膝関節屈曲・内旋 ⇒ 膝関節伸展・内旋

このような作用なのではないかという説が大きくなってきています。  

 

膝窩筋の本当の作用

元々、膝窩筋はというと…

膝関節は脛骨を内旋させて膝関節伸展位からのロックを解除する働きが重要視されていました。

その他にも膝窩筋の起始部は関節包の深層と関係性があることで筋肉としてのダイナミックな動きの作用から関節包に関連するスタティックな安定性にも作用していると考えられます。

ということは膝窩筋は固有感覚受容器に関しても関係性があることが言えます。

若干話は逸れましたので、膝窩筋による膝関節伸展制限に話を戻します。  

 

膝窩筋の本当の膝関節運動の制限は?

結論から言えば…

膝窩筋は膝関節伸展制限になる!

この記事を改変するまでは伸展制限にもなるし、ならない!と書いていたが今回改めて膝窩筋について調べ直し、改めて私の考えを述べたいと思います。

それは膝窩筋は膝関節伸展制限にもなるし、屈曲制限にもなる!です。

膝窩筋はとても複雑な筋肉です。

はっきりと言えば、膝関節後面筋のため伸展制限にもなりますし、膝関節を屈曲していけば作用が変化して伸張方向へと伸ばされ、屈曲制限にもなります!  

膝関節の矢状面からの観察

膝関節伸展位で矢状面からみた時に… 膝窩筋は膝関節の屈伸を行う軸に対して前方にあるため伸展方向に働きます。 situkakinnsoto

画像引用(一部改変):Anatomography

これは膝関節屈曲を行う際の大腿骨の軸が中央よりも後方にあるとされており、膝窩筋の起始と停止部を結んだ線がその大腿骨軸よりも前方に位置するため伸展方向に働くのではないかとされています。

そのため膝関節伸展0°から屈曲初期においては膝窩筋は伸張されるようです。

だから膝関節の最終伸展域での伸展制限は膝窩筋によるものも考えられる。

またその伸張領域を突破すれば膝関節の軸より起始・停止部が後方になるため弛緩します。

しかし深屈曲位にはまた膝窩筋が伸張方向へと伸張されるため膝関節の屈曲時の膝窩部痛に関しても膝窩筋の伸張痛が考えられます。  

 

しかしこれは条件付きの制限になる!

それは皆さんご存知のスクリューホームムーブメントが存在するからです!

スクリューホームムーブメントとは…膝関節最終伸展時に脛骨を外旋させる運動のことを指します。

ここまでのこの話は膝関節の伸展運動にスクリューホームムーブメントがしっかりと機能していれば…と仮定した状態です。

しかし現実には逆スクリューホームムーブメントが発生することも十分考えられます!

それは膝関節の変形であったり、靭帯の弛緩性が問題であったり、出現方法は様々です。

そのため膝関節の伸展制限が膝窩筋であるかはこのスクリューホームムーブメントがしっかりと機能している状態であるか確認することが重要となります。  

 

膝窩筋は脛骨内旋を担う唯一の単関節筋!

余談になりますが、膝窩筋は脛骨内旋を担う唯一の単関節筋になります。

これが何を意味しているかというと股関節や足関節の状態に左右されない!

そのため一番重要な膝関節のロック解除機能を遂行できるかは筋スパズムを起こさないことが大事になってくる。

筋スパズムを起こすとただでさえ膝関節の屈曲・伸展に与える影響は大きい。

その上、膝関節伸展位からのロック解除機能が作れない状態になると膝の運動はうまく遂行できません。

この点も踏まえて膝窩筋を観察していただきたいと思います。  

 

まとめ

膝窩筋は膝関節伸展の作用があるという説がある!
膝窩筋は膝関節の伸展・屈曲の両方に制限因子となる!
スクリューホームムーブメントが機能しているか確認すべし!
膝関節のロック機能が重要なことを忘れずに!

 

これが今の私の膝窩筋による膝関節伸展制限の考え方です。

先ほどもお伝えしたように膝窩筋は関節包との絡みもある分、膝関節の固有受容感覚においてもとても重要です。

そのことを考慮し、膝窩筋の重要性に再度着目して患者さんの膝関節伸展と屈曲とを観察していただけるといいかと思います。

今回のように記事を再度書き直し、訂正する場合があるため何度も読み返してもらえれば幸いです。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。